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第65話

 二戦目の火蓋が切られ、悠里は市街地エリアへと駆け抜けていく。


 ヘルメットさん考案、対パーカー用の作戦。素人が考えたにしては緻密で抜け目ない。


 疑いたくもなるが、今は目の前の敵に集中せねば。


「こっちは配置できた」


 二階建ての櫓で射撃体勢を取って無線に吹き込む。


「ヘルメットさんもオッケーですね」

「そのようだ」


 ヘルメットさんのバイザーと目が合う。森と市街地の境目に近くに布陣している。


 しかしあの場所は森側からも撃たれる。そんな危険地帯に自称初心者を置くわけにはいかない。そう悠里は必死に説得したが、


「私が行く」というフリップは消せず、何か意地のようなものを感じた。


「ターゲットを視認。交戦します」


 咲良がパーカーを捉え、先制で発砲。


 それを見切って身のこなしとバリケードの障壁で巧みに躱され、


「君からラブコールとは私も愛されるようになったな。だが、まずは」


 踵を返すとグレネードランチャーの矛先をヘルメットさんへ向け。


「華の周りを飛ぶ蜂たちを掃除させてもらうよ」


 そう宣い発砲。


「ヘルメットさん!」

「ターゲット|正面〈ホット〉。予測通り」

「え?」


 チェイタックの銃口から弾丸が舞う。 


 一直線に向かった先にはパーカーが放ったモスカート。真正面から直撃させるも、軌道は僅かしか変わらない。


「だけど・・・・・・これで良い!」

「え・・・・・・あのフリップ」

「あぁもうじれったい! 咲良はそのまま正面戦闘。奴は貴方のスピードについて来れてない。新井は私と奴のモスカートを迎撃! いいわね!」

「迎撃って無茶な!」


 さっきまで一言もしゃべらなかったヘルメットさんが、急に尖った口調で指示を出す。


 ・・・・・・でもこのちょっとツンとしてる感じ、誰かに似てるような。


「ヘルメットもじれったい」


 バサリとヘルメットを取る。


「結衣?!」

「ボサッとしてないでさっさと動く! ムーヴムーヴ!

次弾来るわよ咲良!」

「俺がやる。ラプア!」

「分かっている。左3ミル。ファイア!」


 飛んできたモスカートにピタリと命中。


 軌道がズレ瞬間、炸裂して飛ぶBB弾は咲良や悠里達とは全くの別方向へ指向した。


「あの弾の弱点は少しでも軌道をズラすと明後日の方向に指向すること。つまりアレは時限信管。タイミングを外すと機能しなくなる」


 さらに二発。しかし結衣の弾丸に軌道を逸らされて無料化される。


 悠里はパーカーの方へ向く。


「奴を倒しに行く」

「あんたはそこから絶対動くな! 良い?!」

「咲良一人で行けるのか?」

「あの子を見くびらないで」


 悠里は下唇を噛んで、じっと留まった。


「グレネードの弱点を見破ったか。その観察眼、見事」


 感心するパーカーを余所に咲良が一気に距離を詰め、連打を浴びせる。


 チェストリグのグレネードは残弾切れ。これなら押し切れる!


「しかし、私の携行装備が減るということが抜けているな!」

「なっ!」


 咲良の照準からほぼ一瞬で消えた彼の姿。


 軽くなった分、足も速くなったというわけか。


「9時方向を取られてる!」

「速いっ!」


 発砲音と同時に頭を逸らすと、パーカーの射撃が視野を横切る。


 間一髪で避けたが、向き直るとすでに彼はいない。


「3時!」

「もう?!」


 今度はバックステップを踏んで避ける。


 あいつ、急に敏捷性が上がった。モスカートとランチャーが負荷になってた分、その実力を見誤っていた。


 まるで咲良ドライブを見ているようだ。悠里はそう思う。


「咲良ドライブ・・・・・・そうか。咲良に頼みがある」

「なんでしょう?」

「背中は俺がカバーする」

「勝手に動くな! こっちの予測だって・・・・・・あぁもう!」


 悠里は狙撃位置を離れ、二人の近接戦闘へ飛び込む。


「考えがあるんですよね?」

「あの男、恐らく横しか取らない」


 確信はない。しかしパーカーにとって咲良の背後を取るということは狙撃手の存在があるから難しい。


「だから二方向を見れば奴の動きは制約される」


 そして悠里の言うとおり、パーカーは二人の左から攻める。


 咲良ドライブの弱点は使える人間がたった一人であること。同様に咲良に対抗する彼の動きもまた、彼にしかできない。


「一人だからこそ、複数人で対処すれば勝てる」


 練度さえ伴っていれば、パーカーだろうが咲良ドライブだろうが止められる。


 悠里は背中で咲良を無理矢理振り向かせた。


「なっ?!」

「正対してしまえば」


 咲良は一気に踏み込む。弾幕を張るパーカーだが、それを掻い潜って突入し、


「貰いました!」


 右腕へ二発喰らわせた。


 利き腕は持っていた。だがダメージはそれだけ。


「左腕が残って」


 パーカーはライフルをスイッチ。だが横に回った悠里を察知しすぐにその場を動く。


「速く動けるな君も」

「そりゃどうも!」


 バリケードの合間を縫うように戦う三人。乱れるように動く彼らを結衣は冷静に追う。


 しかし五分も続けば、悠里と咲良の残弾も心配になる。


「二人とも。戦場はここだけじゃないのよ! 深追いは禁物」

「ダメだ。ここで仕留めなきゃ他が全滅する。さっきの見て分からないのか?」

「はぁ? あんた喧嘩売ってんの!?」

「あぁもう喧嘩しないでください二人とも!」


 喧嘩する余裕があるのなら大丈夫かもしれないと咲良は思う。


「いい加減決めるわよ。新井、次の角を右に曲がって陽動! 咲良はその間に背後へ回って。私は正面から狙撃する」

「ですって悠里君!」

「癪だがそうさせてもらう!」


 パーカーが咲良へ指向した瞬間、


「こっちだナルシスト!」


 悠里は全身を晒して狙う。


「度胸は十分・・・・・・美しさに勝る勇敢さ。感服した」

「いちいち気持ち悪いなこの人」


 射線が交わる。


 利き手がやられている割に随分と余裕がある。恐らく咲良の位置も掴んでいる。


 トリガーのタイミングはほぼ同時。互いの弾丸がぶつかり跳ねた。


 そして咲良が背後から射撃。しかしパーカーは見切って避ける。


「やばっ! 悠里君避けて!」

「そのつもり!」


 咲良が放った弾丸の流れ弾を左足に喰らう。赤く表示され、ゲーム中は使えなくなる。


「クロスファイアくらい予想はつく。相棒の弾丸で受ける傷はさぞ悔しいだろう」

「さぁな。何も感じない」


 ヘッと笑ってみせた刹那。


 パーカーのこめかみを弾丸が弾いた。

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