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第62話

 電車とバスを乗り継いで約一時間。


 フィールドでは今日の相手『横川工業高校』の面々がすでにウォーミングアップを始めていた。


 その風景を一瞥すると闘志剥き出しの瞳同士が合う。


 気圧されるような目には殺気に近い物を感じて身体が戦闘態勢を取る。


 だが、


「パーカー! ひっさしぶりー!」


 セーフティーエリアの一角にいた金髪のイケメンを見るや、再会を喜ぶ気の抜けた涼の声色が響いた。


「待ちくたびれたぞ涼。昔から君は人を待たせることに長けている」

「なんだよぉ。そこは普通「待ってないぜ涼」って気遣えよ。私だって乙女なんだぞ」

「マシンガンを担ぐ乙女は世界中探しても稀有だぜ」


 皆を引っ張るような勇ましさが欠片も無くなった。


 彼は一体・・・・・・? するとその男は悠里を見て、驚いた表情をした後に微笑んだ。


「君、名前は?」

「新井 悠里です」

「悠里・・・・・・美しい響きだ」


 噛みしめるように呟き頷いている。


「失礼。横川工業三年、蔵前 パーカーだ。あまりの美しさに見惚れて我を忘れてしまった」

「すいません、男です俺」

「なんと?! しかし同性であろうと君は美しい。どうだろう? うちに来ないか?」

「人んちの部員を勝手に勧誘するな!」


 涼のツッコミが入ってなんとか阻止される。


 嘘偽りない純粋な気持ちなのは真剣な顔と眼差しで分かるんだけど、絶妙に気持ちが悪い。


 悠里は苦笑いでそっとパーカーの元から離れていった。


「だがお前の言ってた片岡 咲良君がいないな。休みか?」

「追試で遅れてくる」

「なるほど。それを聞いて安心した。まさか涼が彼女を連れてくるとは夢にも思わなかった。運命を感じずには居られないな」

「かっこつけてるのは相変わらずだなお前……ゾットするぞ」


 思っていた事をすらすら言える涼が羨ましい。


「パーカーさんとはどういう関係なんですか?」

「腐れ縁、俗に言う幼馴染みだ。アメリカに居るときから一緒」

「アメリカ?」

「そう。中学二年まではアメリカに居たからな私。親の仕事の関係で日本に来て、そのままここで暮らしてる」


 涼先輩って帰国子女だったんだ。なんて変哲のなく驚く。


「まぁ昔話は終わってからでも良いだろう。咲良が来る前にこっちもウォーミングアップがてら一戦交える。準備が出来た奴からフィールドインだ」


 涼から告げられ、一足先にフィールドへ入る。


 市街地エリアと森エリアで分かれて構築されたフィールドは150メートルの広さを持つ。サバゲーのレギュレーションなら広すぎるが、交戦距離が長くなる236ならば狭い。


 最もEOS本戦はこれの数百倍は広いエリアで戦うことになるのだが。


 最後尾の涼が入って城西と横川工業、両チーム開始位置へ付く。


「スタート前に作戦を伝える。前衛チームを二つに割って両方からフラッグへ攻める。悠里は森側、ヘルメットさんは市街地側のチームをカバー。私たちが牽制しているところを叩く。最もこちらが策を講じる前に動いてくると思うけど」

「何か心当たりが?」

「パーカーの奴は必ず何か仕掛けてくる。手先だけは無駄に器用だからな」


 意味深な言葉に疑問は尽きない。しかし詳しく聞く前にスタートの合図が鳴り、悠里は作戦通りに森へ疾駆していくのであった。

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