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第61話

 射撃場での撃ち込みの最中。目線がヘルメットさんに釘付けの悠里に


「練習は良いのか悠里」


 とラプアが銃のままで声を掛けてきた。


「あいつが気になってなラプア・・・・・・どうみる?」

「初心者とは言っていたが見込みはある」

「理由は?」

「最初に選ぶ相棒がボルトアクションライフルの奴は才能がある。練習すれば一流のサバゲーマーになれると保証するぞ」

「なるほど……」


 ラプアの主観的な意見に、妙な納得をしてしまう。


 236、というよりサバイバルゲーム全般に言えることだが、手動で弾を装填して撃つボルトアクションよりも電動やガスのオートマチック銃が断然有利である。


 それを知ってか知らずか、ヘルメットさんは敢えて前者を選んだ。初心者がサバゲーで陥る典型的なミステイク。


 しかし、悠里が納得したのには方式ではなく、選んだ銃にあった。


「なんだツッコまないのか?」

「普段の俺ならツッコんでる。ただ、あの銃を選ぶセンスが無かったらね」

「チェイタックM200、しかもエアガンメーカーのじゃなく、実銃メーカーのだ」


 ハンドガード代わりに取り付けられたであろうハンドルが特徴的な狙撃銃がヘルメットさんが使う『チェイタックM200』だ。


 実銃は独自の.408チェイタック弾で約二キロ先の標的を正確に仕留める能力を持ち、製造元が同じエアソフトガンにもその優秀な弾道特性と命中精度は受け継がれている。


 ただ立射するのに重量9キロは重すぎる。ヘルメットさんも同感なのか伏射で撃ち始めた。


 70メートル強のレンジ。初弾から命中させ、悠里は目を見開いた。


「ヘルメットさんって本当に初心者か?」


 一瞥してコクリと頷く。


「おい悠里。口だけじゃなく銃口動かせー!」

「あ、はい!」


 涼にどやされ、悠里もシューティングレンジについた。




「やっと終わったぁー」


 咲良はそう言いながら机に突っ伏した。


 ラプアさんのおかげでなんとか乗り切れたけど・・・・・・。


 フル稼働していた頭は湯気でも立っているんじゃないかと思うほど熱い。


「よく頑張りましたね片岡さん」


 初老の先生もその真面目ぶりを褒めてくれる。


 これで一学期はなんとか乗り切れる。達成感に浸っていたが、


「はっ練習試合!」


 すぐに立ち上がり、凄まじい速度で教室を出ようとする。


「本当、元気ですね。二学期は追試なんて受けないようにするんですよ」

「あ・・・・・・はい」


 別れ際にそんな小言を言われて赤面する。私だってやればできるんですからね! やらないだけで。


 膨れっ面で教室を横目に出て行く。


 急がないと遅れちゃう。逸る気持ちで走ると突き当たりで柔らかい何かが顔にぶつかってきた。


 幸い転びはしなかったけれど目線を引いた瞬間、反射的に頭が下がった。


「す、すいません!」


 それが胸、しかも先輩のとなるとこうなってしまう。


 銀の縦ロールの髪をした生真面目そうな見た目で、顔は怒ってるでも笑ってるでもない。


「怪我とかありませんか?」

「ぶつかったことは想定の範囲内ですからご心配なさらず。片岡 咲良さんですよね? 236部の」


 この出会いは偶然じゃないらしい。


「え? あっはい! そうです! どこかでお会いしましたっけ?」

「全国大会の出場メンバーに名前がありましたので。申し遅れました。私は生徒会書記の郡山。生徒会長から練習の視察をと指示を受けたのですが、地下のフィールドには誰もいなかったものですから」

「午後から練習試合が入ったんです」

「なるほど、道理で」


 今朝になるまで何も知らされてませんでしたけどね。


 咲良は場所と時間を教え、


「じゃあ私、先を急ぎますから」

「片岡さん。よければご一緒させていただいてもいいですか?」

「一緒?」

「会長の指示は視察ですからね。私も行きます。自分の交通費は持ちますので」


 来るも来ないも勝手なのだが、意外な提案に固まってしまう。


「ダメでしょうか?」

「あぁいえ! 是非! でもサバゲーに興味がありそうには見えないですけど」

「新井さんです」


 咲良はぐっと身構える。


 もしやこの人・・・・・・。渋い顔をすると何かを察して、


「彼の銃に興味があります。なので、この目でじっくり見たいんです」


 悠里君自身に興味はないみたいだ。安心した。


 安堵で胸を撫で下ろすが引っかかる。


「なるほど。悠里君の銃にですか・・・・・・」


 すると目的はラプアさんになるけど、それはそれで困ってしまう。


 彼女がもしマスターだったら。迂闊に案内などできないけれど、場所を伝えてしまったから今更断っても彼女は来る。


 なら傍に置いた方が良い。咲良は数瞬の間を置いてから頷いた。


「ありがとうございます。では行きましょう」


 美しい所作で丁寧に感謝され、咲良は手を引かれた。


 どこか掴めない雫の性格に翻弄されるが、サバゲーに興味を持ってもらえるのは悪くないと思うのであった。


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