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エンドロール

カフェ『スティール』の一角。


扉の鐘は今朝から一度も鳴らない。定休日の札をひっさげればそれもそのはずで、カウンターの後ろにはカップを磨きながら見やすいように立てたタブレットを眺める五十鈴の姿があった。


「ふぅん。そっか。君の選択はよくわかったよ」


映し出されていたのは人数不利から奇跡の逆転勝利を飾った城西高校の試合結果。想いを寄せる後輩の勝利であるはずなのに、彼女は眉間に皺を寄せた。


「さっきアリスから連絡があったの。残念ね。あの子なら分かってくれると思ったのに残念」

「運命でさえ僕の邪魔をするんだ……ほんっと、どいつもこいつも分からず屋だ」


僕が用意した舞台とシナリオが全て台無し。怒りで拳に込めた力が戻らない。


「こうなった以上、ラプアちゃんには消えてもらうしかないかも」

「その必要はないよ。むしろ彼女には居て貰わないと」


怒りから不敵な笑みがこぼれる。五十鈴はバックヤードの方へ向いて言う。


「ドゥーガルガンの可能性を放棄した人間には呪いとして作用して貰わないと」

「あぁ。あの子ね。秘蔵っ子。五十鈴ちゃんったら、ずる賢い」


次はどの子が消えるのかと考えるだけでゾクゾクして堪らない。


五十鈴の妙案がどんな風に作用するのか。少なくともあの二人に確実な変化を与えると思うと、待ち遠しくて心が踊る。


宛先の伝票を取れないようにしっかりと貼ると、彼女への恨みを込めて言う。


「少年の踏み台になってもらうよ咲良君。ゲームの結末を変えてしまった君への罰だ」


僕と悠里少年を繋ぐための戦いの結末を変えた罰。僕の愛に泥を塗った報いだ。


きっと喜んでくれると思うなぁ。そして、僕たちの眼の前から消えてくれるととっても幸せなんだ咲良。


狂気を纏う笑みで五十鈴はガンケースをカウンターに置いたのだった。




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