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第40話

初夏とは思えないうだるような暑さの最中で、EOS予選大会の準決勝は選手たちのゲームプレイと各校の応援で白熱していた。


波乱の予選大会一回戦から約一か月。破竹の勢いで勝ち上がってきた城西高校は、この試合でも大差をつけて勝利した。


だが前衛の二人は連携を取ろうとする気が皆無。まるで入部仕立ての頃に戻ったようだと、涼は試合を振り返りながら思う。


何か衝突が起こっているのは間違いない。悠里にいつ声を掛けようかとまごまごしている咲良の様子から分かる。


悠里の方は気に留める暇もなく練習に没頭している。


部員同士のトラブルを解決するのは部長として当然の務め。聞き出そうとするが、


「何でもないですよ。練習したいんで、これで失礼します。すいません」

「な、なんでもありません! 気にしないでください部長」


などと二人は誤魔化す始末。全く痴話げんかも大概にと呆れたが、奏の一件でどちらかが止めるなんて言い出すのではないかと不安に駆られた。


何か良い方法はないか。決勝まで二週間、二人のすれ違いを解消できなければ確実に全国大会への道は遠のく。ないと言っても過言じゃない。


部員を鼓舞し、気丈に振る舞ってはいたが涼は内心焦っていた。


ある日の放課後、部へ顔を出すと一番乗りで悠里が50メートルレンジで撃ち込み練習を始めていた。


寝そべって標的に集中する彼は入ってきたのに気づいていない。涼は少しだけ後ろから眺めることに決め、背負ったガンケースを置き壁に寄り掛かった。


呼吸を整えてトリガーを引く。シリンダーの解放でBB弾は加速し銃口から駆け出していく。


悠里の腕なら幾度と見てきた。236は50メートル以上の距離で撃ち合う状況が多々あるが、この近距離なら必中させることなど造作もない。


しかし30メートル辺りを境に弾道にふらつきが出て弾丸は上へそれていく。すかさず次弾を射撃するが、これも的から外れた。


マガジンを二本ほど撃ち切って、コンクリートの地面に拳を思い切り叩きつけた。


「どうすりゃいいんだよ……」


ラプアの声が聴こえない。どこに弾丸が飛ぶかまるで分からない。


自分の練度は変わっていないし集中もしている。


いや、彼女を頼りすぎていたのかもしれない。変わってないと思っていても、自覚がないだけで弱くなっている。


悠里は自棄気味に仰向けになって天を仰いだ。


彼の狙撃は洗練さを失い、スランプにでも陥ったような有り様だ。


「随分と悩んでいるようだね。悠里少年」

「涼先輩……見ていたんですか」

「まぁね。何があったんだい? この距離を外し続けるなんて君らしくない」

「何でもないですよ。調子が狂っているだけです」

「じゃあスナイパー辞めてアタッカーにでもなるかい? 私のようにマシンガンで前線を荒らすのは、なかなかに気持ちが良いぞ」

「遠慮しますよ。それこそ俺らしくないです先輩……先輩?」


涼の冗談を軽くいなした悠里だが、閉口を忘れてじっと悠里を見つめていた。


「それだ」

「は、はい?」

「冗談のつもりで言ったが、妙案じゃないか! なんだこの手があったじゃないか」

「えっと、まるで話が読めないんですけど……」


困惑がちになる悠里。そんなのお構いなしに涼は語った。


「合宿をするぞ。今週末からだ」


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