アドバイスを早速試そうとフィールドに帰ってきたのだが、電動ガンの銃声とは違う喧騒がそこに広がっていた。
「あんた、チームで戦ってる自覚ないんじゃないの?」
奏の怒号を部員たちが取り囲んでいる。人だかりを掻き分けると、その中心では奏が咲良に詰め寄られていた。
「私の指示も聞かずに独断専行で前に出る。おかげで前線が崩壊したわ!」
「けど私が戻って全員倒しました。問題はないはずです」
「えぇ貴方がご丁寧に蹴散らしてくれたから辛くも勝てた。でもね、私達はチームなのよ。全員で勝たなきゃ意味がないのわかる?」
「分かりません。より勝てる確率の高い戦術を取るのがベストだと思います」
「なら味方を蔑ろにしても良いってわけか呆れる。それで良く今までやって来たわね。チームメイトが貴方に付いていく理由が分からない」
奏は呆れたように吐き捨てると、咲良は鋭い痛みでも感じたかのように顔を一瞬だけ顰める。
「全力で戦っているだけなのに」
「言いたいことがあるなら直接言いなさいよ」
不服そうな咲良に詰問するが答えはない。
「もういいわ。あいつとは組めない」
突き離すように言い放ってチームマーカーを床へと投げた。気まずい沈黙が数分続いた後、咲良はゴーグルを外して無言で片づけを始めていた。
「片岡さん」
「止めないでください」
人目のつかない荷物置き場で引き留めようとした悠里だが取り合う気がない。
ここへ連れてきたのは他ならぬ自分であるし、傷つけてしまったのなら責任の一端もある。意識するたびに罪悪感が心に滲んでいった。
「先輩はああ言うけど、きっと今後のことを考えて」
「本当にそう思います?」
「そりゃそうだろ。安土先輩や三城先輩だってチームを強くしようとして」
「でもチームを強くするために私が邪魔なのなら、ここに居る意味はありません」
「邪魔とは誰一人言ってないだろ!」
大声に咲良がビクンと身体を跳ねさせた。
しかしすぐにこわばって
「……アレの何処が必要という意味に聴こえたんですか。ああして捨てられた人の気持ちも分からないで、知ったような口を利かないでください」
人の信じ方が分からない。その理由が少しだけ垣間見えた気がした。離れていく咲良の背中に立ち尽くす。
罪悪感と自責でおかしくなりそうだった。ここへ連れてきたのも、この状況を生み出したのも自分自身。
もはやこれまでなのか。そう思いかけたとき、ふと彼女との戦いで呟いた言葉を思い出す。
「悪あがき」
どんな危機的状況でも活路を見い出す。抜け殻になりそうだった心が我に返って、咲良の背中を追おうと踏み出す。
しかしその日、咲良を見つけ出すことはできなかった。