「暇だし、鬼ごっこでもするか?」
俺が突然の閃きを口にすると、皆顔を輝かせた。
「いいねぇ! たまには童心に帰るのも乙だよね?」
シェラは早速いきり立っている。
「童心に帰る? あなたは四六時中幼稚園児並みの精神じゃないですか」
グラムダルは相変わらずシェラに向かって毒を吐く。
「お人形さん、走れないもんね? 鬼ごっこにすら加われなくて残念でしたー」
「この落書き娘が! 今捕まえてやる!」
すると、飾ってあったデカめの球体関節人形が、突然シェラを羽交い締めにした。
「うわっ、なにこれキモ!」
「私は【人形の王】。ヒト型に近い人形であればあるほど、強力に操れる」
「うわっ、ちょっ、怖いよグラムダル。目が怖いって。放して放して!」
「目が怖い? 私の目はずっとこんなだ!」
確かに、フランス人形のグラムダルの目つきが変化するわけないもんな。にしてもこの二人、いつもこんなだな。喧嘩するほどなんとやら、というやつか。
「とりあえず、俺が鬼な」
「そこはジャンケンじゃないの?」
カノンが突っ込んでくる。生真面目なこいつまで乗り気とはな。
「だってここ、俺の蔵の中だし、構造変えれば逃げ隠れし放題だろ」
「確かに」
「じゃあじゃあ! 私が逃げてもどこにいるかすぐ分かっちゃうんじゃないの?」
「蔵は普通の建物に魔力を練り込んで地形効果を発揮させるものだ。何もそこら中に感覚器官が付いてるわけじゃない。隠れられたら普通に見つけられないよ」
皆、首をかしげている。俺が説明してやったというのに、半信半疑のようだ。ここは仕方ない。
「一回テストプレイしてみようか」
「賛成!」
「よーし。じゃあ制限時間30分で、相手への攻撃は禁止な。俺は40秒数えるから! その間に隠れろ! ほれ、散開散開!」
俺は柱にもたれて目をつむり、40秒数えた。海上宮殿は広いし、これで十分だろう。ヌバタマ商会から助け出した異能力者たちは別フロアにいるし、好き放題走り回れるしな。