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第11話 査問の時間

「取り逃がしたのか、ヘルメス」


 部屋の奥から、唸るような声が響く。魔術協会理事長にして秘匿協会第三位階、ヘルメス・アイレスフォードは詰られていた。シャンデリアで照らされた大広間の奥は、光を吸い込んでいるかのように薄暗い。奥に鎮座する者の姿は見えなかった。


「申し訳ありません。存外に逃げ足が速く」


「お前が天離の非嫡男相手に、後れを取るとはな。奴の脅威を過小評価していたのではないか?」


「返す言葉もありません」


「だがこれは我々にも言えることだ。【公開同盟】とやらには引き続き警戒するようにしなくてはな。で?」


【奥の者】が問いかけると、途端に濃い魔力が場を支配する。


「天離の現当主。何か申し開きはあるか?」


 恭二の父、天離塞門(さいもん)は、顔を青くして縮こまっていた。


「申し開きのしようもありません。現在一族総出でバカ息子を探しております」


「バカ息子……息子か。あれをまだ一族の一員と認めるのか?」


「それはっ……」


「早々に親子の縁を切れ。さもなくば秘匿協会でのお前の地位はない。以上だ。分かったな?」


【奥の者】が身を乗り出す。


 もはや建物と言えるほど巨大な玉座に腰かけた、牛の悪魔だった。そして、背中には漆黒の翼まで生えている。秘匿協会の頂点に君臨するのは、この世ならざる人外だった。


「承知……いたしました」


 塞門は、冷や汗を滴しながらもどうにか答えた。


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