「ペラペラ喋っちゃってたけど。その女信用できるの?」
カノンが心配そうに問いかけてくる。
「大丈夫だ。あの人は俺の言うこと、全部作り話だと思ってるから。今まで送った動画もフェイク認定されてるし」
「それって意味ないんじゃ……」
「いいや。記事にしてもらえば、一応公になる。秘匿協会の連中が握りつぶすだろうが、異能力者や、異能について研究している者は気付く。それが狙いだ」
逆に言えば、そんな地味なところから積み上げていくしかない。神秘の公開の道のりは遠い。
「これだけの行方不明者が出ていて何も変わらないとは! 腐りきった世の中ですね!」
グラムダルが吐き捨てるように言う。彼女なりに思うところがあるようだ。
「だーから、そのためにも天蓋を砕くしかないんでしょ、お人形さん? 空が落ちれば、さすがに奴らも隠蔽しきれないからね」
シェラが補足する。その通りで、俺が天蓋の破壊を中目標にしているのもそのためだ。
「くっ、そうですね。頭のおかしい落書き娘にしては的確なことを……」
グラムダルは相変わらずの汚言を吐いた。
「お人形さん、一回ガチでバトろうかぁ?」
「トラウマ抉られてビビってた小娘が、私に勝てるとでもぉ?」
「はい、喧嘩しない!」
バチバチと睨み合う二人を、カノンが頑張って宥めている。全く。騒がしくなったものだ。
しかし、空に見せかけた天蓋なんて、いつから在るんだ? 地球表面全体を覆うほどの遮蔽物を建造するなんて、大がかりすぎる。
そこまでして秘匿協会は何を隠したいのか?
正直言って謎だらけだ。
だが、最悪の仮説が頭を過る。
「あれだけの遮蔽物を即座に造る……できるとしたら、それこそ【蔵】の技術か」
天離の人間が関わっている可能性は捨てきれない。
「せっかく実家に呼び出されてたんだし。色々史料漁っておけばよかったなー」
とはいえ後悔先に立たずだ。次の計画を進めるしかない。