目次
ブックマーク
応援する
いいね!
コメント
シェア
通報
第3話 海上の宮殿

「宮殿といえば宮殿ですが……」


「想像の斜め上だね」


 グラムダルとカノンは、俺が太平洋上に建てた宮殿の上で唖然としていた。モザイク柄の壁にし、オリエンタルな雰囲気を演出してみた。ちなみにシェラは、昨日の能力行使で疲れたのか、まだ寝ている。


「海の上の宮殿だなんてロマン溢れるだろ? 何か不満でも?」


「いえ、天離の【蔵】の技術に驚いているだけです」


「ホント。恭二、なんで正統継承者になれなかったの?」


 それは優秀すぎる弟を持っているからなのだが、その話はしたくない。


「俺が真面目に家業を継ぐようなタイプに見えるか?」


 俺はそんなことを言って誤魔化した。


「見えませんね」


「あー、納得。恭二、自由にやりたいタイプだもんね」


「その通り。やっぱり俺のように才ある者は、家業や家庭に縛られる器じゃないよなぁ!」


「自分で言っちゃうのね」


 カノンが呆れていたが、まぁいいだろう。他人がどう評価するかなどより、自分がどう自己認識しているかの方が遥かに大切だ。


「でも、こんな目立つところに宮殿なんか浮かべて、攻撃されないの?」


「俺の四つの奥の手の一つ、【不見鏡(みずかがみ)】を使っているからな。周囲からはこの建物を認識できない」


「ホント、天離の【蔵】って何でもありね」


 魔力を練り込んだ建物を錬成し、様々な地形効果を生み出す【蔵】の技術。天離家で腐らせておくにはもったいない技術だ。


 俺が天下を獲った暁には、【蔵】だけでできた異能都市を造成し、異能力者のユートピアとしてやろう。


「次の標的だが、ここを狙う」


 俺が地図の大まかな位置を指し示すと、皆覗き込んだ。


「ここって……」


「シェラが捕まってたとこですね」


「おはよう! 恭二きゅん! 朝からなんの話?」


 シェラがいいタイミングで起きてきた。


「ヌバタマ商会。お前の古巣をぶっ潰すことにした。いいよな?」


 シェラの瞳にはわずかに恐怖の色が浮かぶが、すぐに笑顔で取り繕ってみせた。


「いいよ。あんなとこ、無いほうが世のためだし」


「じゃあ決まりだな。異能力者を拐っては人身売買する連中だ。手心加えずに潰すぞ! 全ては、異能力者が堂々と生きられる自由な社会のためだ!」


 俺は掌を突き上げる。


「「「了解!」」」


 皆ハイタッチしてくる。


 ただし、シェラの手だけは弱々しかった。


コメント(0)
この作品に、最初のコメントを書いてみませんか?