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第10話 二人の友達②

「お腹……割れる」


「大げさよジス」


食事が終わりおしゃべりをしようとテラスのあるサロンに移動してきたのだが……


並べられた料理をすべて平らげた僕は最後の宝石アイスを完食した後、見ていた学生達の拍手喝采を浴びる羽目になった。

いつのまにかあんなに注目されてたんだろう。恥ずかしくて死にそうだ……


「何が一番美味しかった?」


エイダの質問に僕は真剣に考える。


「えっと……」


パンプティングに入ってたプルーンはとても柔らかくて美味しかったし、霧の森のキノコのスープは芸術的に深いキノコのコクがあった。そうだ、初めて食べたラムチョップグリルも最高だった!


「何悩んでるの。この学校特産の魔法食材もあるとはいえほとんどが生まれた時から食べ慣れた料理ばかりだったでしょ。エイダも揶揄うのやめなさい」


赤毛のエルモアが大人びた口調で友人を諌めた。


「はぁい」


エイダはペロリと舌を出して笑ってる。

なんだ、揶揄われただけか。一生懸命考えちゃったじゃないか。

それにしても魔法食材か……。

これから先の食生活がすごく楽しみだ。


「ジス、お腹は大丈夫?」


「ええ、なんとか」


ああ、僕のバカ。ヘンリー先生の言ったことすっかり忘れて……。今くしゃみをしたら絶対お腹が破裂する。


「そんなに苦しいなら魔法で楽にしてあげようか?」


……魔法で楽に?

え?僕殺されちゃうの?


先ほど揶揄われたせいもあり、エイダの言葉に身構えた。


「……楽にってたとえば……」


僕は恐る恐る聞いてみる。


「簡単よ!お腹の中のご飯をぜーんぶゴミ箱に移動させるの!」


「ふあっ?!」


そんなことしたらさっきの美味しいご飯を捨てることになっちゃう?!


エイダは僕の顔を見てあははと令嬢らしからぬ笑い方をした。


「エイダいい加減にしなさいってば」


エルモアがエイダを肘で小突いた。エイダは悪びれる様子もなく「そんな魔法あるわけないじゃない」なんて笑ってる。


……本当酷い


「でもジスならできるかもね」


「え?」


「そうね、ジスは優秀だから。やってみたら出来るかも?」


「それも嘘でしょ……」


僕がエイダをじっと見ると、エイダが慌てて手を振った。


「本当にそう思ってるわよ!あなた何させてもそつなくこなすじゃない」


「……本当に?」


エルモアの方を見るとうんうんと頷いている。


やっぱり魔法が使えるんだ!僕は嬉しくて心の中で飛び跳ねた。


「実はその辺りの記憶も曖昧で……」


「え?そうなの?授業についていけるかしら……」


「エイダ、そこは私たちがカバーするのよ」


「そうね、そうしましょう。まず先生に相談をして配慮をお願いするのがいいと思うわ」


……頼もしい!


「ありがとう何から何まで二人にお世話をかけて申し訳ないわ」


「水臭いこと言わないで。私たちの仲でしょ。それに公爵家ご夫妻の事故があった直後のあなたに会った身とすればちゃんと生きててるあなたを見られてほっとしてるのよ」


エイダとエルモアが二人で頷きあっている。


「……そこもあまり記憶がないんだけど……ところで私たち初めて会ったのは入学式だったわよね?」


僕は淑女らしく聞こえるように言葉を選びながら話しかけた。


「なんですって?」


途端にエルモアの顔が曇る。


「……ジス、あなたどこまで記憶がなくなっちゃったの?」


エイダに至っては半分泣きそうになってた。


「ごめんなさい……。ショックが大きくて」


「……それはそうね。ごめんなさい私たちの考えが足りなくて。じゃあ変な感じだけど改めて自己紹介するわね。まず私からね」


「お願いします」


「私はエルモア。シェイデン侯爵家の長女よ。あなたと初めて会ったのは十歳の時ね。ジスの屋敷でパーティがあって招待されたのがきっかけよ。それから手紙のやり取りが始まって同じ学校に通えるのをとても楽しみにしてたの」


「……そうだったのね……ごめんなさい」


「ああもう!謝るのは禁止よ!」


エイダがそう言って話に割り込む。






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