「やっぱり……」
私は嘆息しながら背もたれに身体を預けた。
「いつから気づいてたんだ?」
「学校でコダタさんを襲った時。私がそう信じた訳でもないのに、ディサエルから大量の魔力を感じた。それにカルバスに会う前にもディサエルが自分で言ってたじゃん。「強い魔力を放ってたら周りに影響が出る」って。だから、魔力が弱いフリをして、強い魔力を隠していたんじゃないか……。そう思ったの。でも何で信仰心の強さで魔力の強さも変わるみたいな事言ったの?」
嘘をついていた事は分かったが、何故その嘘をついていたのか。それだけは分からない。
「ああ、それは……今更お前に言うのも失礼な話だが、オレ達は基本的に人間を信じてないんだ」
「生まれた時から散々な扱いを受けてきたからね。神になってからも、見た目だけで好き勝手に言われるんだもん。信じたいとは思わないよね」
「だから、たまに人間に力を貸しはするが、知り合った時点では相手がどんな奴なのか分からない。だから相手の人間性や、どれだけオレ達を信じているかによって、オレ達もどれだけの力を出すか決めているんだ」
「使徒が何を考えているかくらい、知ろうと思えばすぐに分かっちゃうから、それでわたし達の事を強く信じてくれているな~って思ったら、わたし達も使徒を信じて力を使う。今回の場合であれば、わたし達は翠が正しく信じてくれていると思ったから、わたし達も翠を信じて力を与えた。ちょっと強すぎちゃったみたいだけどね」
ごめんね、と言いつつもスティルは笑顔を崩さなかった。悪い事をしたとは微塵も思っていなさそうだ。
「あんまり力を使い過ぎるとそういう事になるから、普段は隠してたんだ。それに力はここぞと言う時に使う方が効果的だからな」
ディサエルも悪びれる様子もなく言う。信じる、信じないとは言うが、この辺りの思考はどうにも相容れない。
(でも、何だろう……)
そんな確固とした意志や信念があるからこそ、頼もしく感じてしまうのだ。
「あー。負けた」
何にかはともかく、負けた気分だ。
「勝負を持ちかけられた覚えはないが、神に勝てるとでも思ったのか?」
「わたし達に勝とうなんて、三千年早いよ」
千年でも一万年でもない辺りに妙な説得感を覚える。
「でも、本当にありがとね。わたし達を信じてくれて」
「オレ達を助けてくれて、ありがとな」
双子は揃って柔和な笑みを浮かべた。その姿はとても神々しく、後光でも見えそうな程だった。と言うか、魔法で後光を作っている……。
(ズルい……)
こんな事をされては、崇めたくなってしまうではないか。
「ズルいよ……」
「好きなだけ崇めていいぜ?」
「翠にならいっぱい力も与えてあげるよ」
なんて二人して私の手を握りながら言う。
「うっ……や、やめろ……。私の心を操ろうとするな……」
「今は催眠術も何も掛けてねぇぜ?」
「魔力が少ないと相手に触れながらの方が掛けやすいのは確かだけど、もうわたし達が本来の魔力を隠してる事バレちゃったからね。催眠術を掛けようと思ったらいつでも掛けられる。でもそうしないのは、そのままの翠が好きだからだよ」
「じゃあ、何で手を……?」
「翠の反応が面白いから!」
(ああ……)
勝てない。どこまでも自分勝手で、それでいて優しさに溢れる所もあるこの神に好かれた時点で、私に勝ち目はないのだ。使徒である限り、敵わない。意のままに翻弄され続けるだろう。だが、それでいい気がする。この双子についていけば、退屈する事はないだろうから。
「あのさ、いつか私を別の世界に連れてってくれない?」
「今じゃなくていいのか?」
「うん。だって、まだここ開業したばかりだし。だから、そうだな……私が一週間くらい休み取って何処か知らない世界に行きたいな~って思った時に、連れてって」
「ああ、いいぜ」
「一週間でも、一ヶ月でも、一年でも、翠が気に入りそうな所に何処でも連れてってあげるよ」
「ありがとう」
信じる神が我が儘なんだから、私だってこのくらいの我が儘を言ったっていいだろう。それを叶えてくれる神様なんだから。