屋敷に戻ると、庭の隅でロクドトが蹲っていた。謎の貴族服からボロボロの格好に戻っている。
「……今度は何をしてるんですか」
「毎度の様に何かおかしな事をしているかのように言うんじゃない。この世界の植物を観察していたのだ。ワタシのいた世界とは少々異なるようだからな」
そう言うロクドトの手元にあるのは一輪の鈴蘭。
「それ毒があるので気をつけてくださいね。食べちゃ駄目ですよ」
「キミはワタシに対して時々失礼だよな。ワタシが何でも口に含もうとする子供にでも見えるのか」
「子供には見えませんけど、その格好だと、その……貧しそうな人に見えるので……」
「ワタシは貧乏人でもないぞ。外で活動する時に汚れを気にする必要のない服装を考えた結果、これに辿り着いただけだ」
なんと。フィールドワーク用の格好だったのか。
「それにこの格好は戦場でも役に立つのだ。こんな格好で倒れている奴を狙おうと思うか?」
立ち上がって、どうだ、とアピールしてきた。確かに狙おうとは思わないかもしれないが……。
「普通そこまでしますか?」
「普通の奴はしない。だからワタシがするのだ」
この人は頭が良いのか悪いのかどっちなんだ。
観察も程々にしてくださいね、と言って私は屋敷の中に入った。双子と三人だけで話したい事があるのだが、二人はどこだろう。
一先ず一階にある部屋を一つずつ見て回ったが、姿は見えなかった。階段を上ると奥の方から話し声が聞こえてきた。ディサエルの部屋に二人ともいるのだろう。部屋の前まで行き、扉をノックする。
「ディサエル、スティルさん。話したい事があるんだけど、入ってもいい?」
扉の奥で「いいぜ」というディサエルの声が聞こえてきた。初めて入るディサエルの部屋。少し緊張する。
扉を開けると案外普通の部屋だった。何か魔法で装飾を付け加えていたりしているかも、と思っていたのだが、シングルベッドがダブルベッドへと変えられていた程度だ。
(一緒に寝るのかな。仲良いな)
双子はそのベッドの上で一緒に座っている。私は手近な椅子を指して座っていいか尋ねると、今度はスティルが「いいよ」と答えた。私は椅子に座り、単刀直入に聞いた。
「何で信仰心が無いと魔法が使えないなんて嘘をついたの?」
双子は互いの顔を見合わせ、また私の方を向いた。
「信仰心が無いと魔法が使えないのは嘘じゃないぜ」
「少なくともわたし達が創造した世界で神に認定された子たちは、ね」
何やら含みのある言い方だ。私が正解を言わない限りは、二人も本当の事を言わないつもりなのだろう。
「それじゃあ、二人とカルバスとでは、魔力の供給のされ方が違うの?」
「あいつは知らないだろうけどな」
「教える気も無いしね」
ふむ……。
「カルバスは信者の数や、信仰心の強さが魔力の強さに繋がるけど、ディサエルとスティルさんはそうじゃない。信仰する人が一人でもいれば、本来の力を発揮する事ができる」
確信を持って二柱を見つめながら言うと、神様達は口を揃えてこう言った。
「「正解」」