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第58話 双子の神①

 屋敷に戻ると、庭の隅でロクドトが蹲っていた。謎の貴族服からボロボロの格好に戻っている。


「……今度は何をしてるんですか」


「毎度の様に何かおかしな事をしているかのように言うんじゃない。この世界の植物を観察していたのだ。ワタシのいた世界とは少々異なるようだからな」


 そう言うロクドトの手元にあるのは一輪の鈴蘭。


「それ毒があるので気をつけてくださいね。食べちゃ駄目ですよ」


「キミはワタシに対して時々失礼だよな。ワタシが何でも口に含もうとする子供にでも見えるのか」


「子供には見えませんけど、その格好だと、その……貧しそうな人に見えるので……」


「ワタシは貧乏人でもないぞ。外で活動する時に汚れを気にする必要のない服装を考えた結果、これに辿り着いただけだ」


 なんと。フィールドワーク用の格好だったのか。


「それにこの格好は戦場でも役に立つのだ。こんな格好で倒れている奴を狙おうと思うか?」


 立ち上がって、どうだ、とアピールしてきた。確かに狙おうとは思わないかもしれないが……。


「普通そこまでしますか?」


「普通の奴はしない。だからワタシがするのだ」


 この人は頭が良いのか悪いのかどっちなんだ。


 観察も程々にしてくださいね、と言って私は屋敷の中に入った。双子と三人だけで話したい事があるのだが、二人はどこだろう。


 一先ず一階にある部屋を一つずつ見て回ったが、姿は見えなかった。階段を上ると奥の方から話し声が聞こえてきた。ディサエルの部屋に二人ともいるのだろう。部屋の前まで行き、扉をノックする。


「ディサエル、スティルさん。話したい事があるんだけど、入ってもいい?」


 扉の奥で「いいぜ」というディサエルの声が聞こえてきた。初めて入るディサエルの部屋。少し緊張する。


 扉を開けると案外普通の部屋だった。何か魔法で装飾を付け加えていたりしているかも、と思っていたのだが、シングルベッドがダブルベッドへと変えられていた程度だ。


(一緒に寝るのかな。仲良いな)


 双子はそのベッドの上で一緒に座っている。私は手近な椅子を指して座っていいか尋ねると、今度はスティルが「いいよ」と答えた。私は椅子に座り、単刀直入に聞いた。


「何で信仰心が無いと魔法が使えないなんて嘘をついたの?」


 双子は互いの顔を見合わせ、また私の方を向いた。


「信仰心が無いと魔法が使えないのは嘘じゃないぜ」


「少なくともわたし達が創造した世界で神に認定された子たちは、ね」


 何やら含みのある言い方だ。私が正解を言わない限りは、二人も本当の事を言わないつもりなのだろう。


「それじゃあ、二人とカルバスとでは、魔力の供給のされ方が違うの?」


「あいつは知らないだろうけどな」


「教える気も無いしね」


 ふむ……。


「カルバスは信者の数や、信仰心の強さが魔力の強さに繋がるけど、ディサエルとスティルさんはそうじゃない。信仰する人が一人でもいれば、本来の力を発揮する事ができる」


 確信を持って二柱を見つめながら言うと、神様達は口を揃えてこう言った。


「「正解」」

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