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第26話 違和感のある一段落

『遅くなりました』


 通信越しにハリスの声が響く。

 指定地点に各機が揃ったのを確認すると、ハリスが指揮を執り始めた。


『状況は把握済みです。今までにないケース。対応策をレインが急ぎで考案していますが……間に合うかは分かりません。各機、油断せずに行きますよ?』


『油断せずに行くにしても、相手がこちらのデータを上回っているんだろう? どうするつもりなんだ?』


 疑問を呈したのはユーリだ。彼の乗るエルプズュンデは、前方に佇んでいる。いつでも出来るようにしているのだ。

 そんな彼の疑問に答えたのは、解析が得意なハナだった。彼女は、全員にとあるデータを送信して来た。


「これは……なんです? 疑似怪獣ハイ・カタストロイから採取したデータなのは分かりますが?」


『このデータを基にして、カタストロイは戦闘形態を変えたのではないかと、レイン博士は見立てているそうです』


『なるほど。では私のキルヒェンリートが先程得たデータもここに足そう。もっとも、向こうは我慢の限界らしいがな?』


 ロディの声で、緊張感がより高まる。動きを止めていたカタストロイが、また身震いを始めたからだ。

 衝撃波に備え、今度はアイクとシャオ、そしてデューイとハナの乗る三機で障壁バリアを展開する。先程よりも強固となった障壁バリアが六機を包む。

 だが……


(おかしい……攻撃してこねぇだと? どうなっているんです?)


 アイクが抱いた疑問は、他の者も抱いたらしい。

 シャオの戸惑う声が通信越しに響く。


『アイツどーしたんだ? 身震いしたまま動かないぞー?』


 身震いし続けるカタストロイは、不意に咆哮をあげ……そのまま霧に包まれて行く。

 気付けばカタストロイは姿を消し、衝撃波で崩壊した街の風景だけが広がっていた。


(なんだったんだ……? 不気味すぎますって……)


『とりあえず、母艦に帰還しましょう。今回の件は、不可解にも程があります』


 ハリスの指示と、ヴェルト・アル=ズィーゲリンからの通信による帰還命令は同時だった。

 脅威は去った。

 しかし、拭えない違和感と不可解さが、トロイメライ戦隊に緊張感を抱かせる。


(いずれにせよ、見解待ちですかねぇ?)


 アイクは、自分が見解を見出せる人間ではない事を改めて自覚してしまった。

 それは、シャオの件でもあり……自分自身の問題でもあると認識している。


 ――シャオジェン・レェリャンという人間への認識を見誤っていた。


(自分は……愚かですよ。全く)


 自嘲しながら、アイクは他の隊員達と共に帰還して行く。

 次なる戦いに備え、これまでの疑似怪獣ハイ・カタストロイ含めた戦闘データの解析等をより急ピッチかつ精査して、対策を練るために……

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