二週間後。
霧の濃さが増して行く中、ハワイ諸島近辺を哨戒していた特別基地の隊員達から、カタストロイ本体の影が見えたという情報が増えて来ていた。
だが、情報だけで本体自体の出現情報はなく、トロイメライ戦隊の三人は動けずにいた。
焦燥感が募るアイクだが、表に出しても仕方ない。
故に、携帯端末のゲームで気を紛らわせていた。なお、ロディは読書をしていていつも通りだが、シャオは仮眠室で大人しくしていたり、かと思えばロディに絡んでいたり忙しなかったが。
(子供じゃあるまいに、と言いたい所ですが。精神面は幼子みたいなもんですしねぇ)
シャオは、かつての人格崩壊から新たに人格を形成している。その結果、知識と精神面での成長度合いに差が出てしまっているのだ。それがまた、アイクの心を揺さぶる。
(本当に、戦場に出していて良いんですかね?)
彼の技術は確かなものだし、身体能力も高い。兵士としての能力だけで考えるなら、かなり有能と言える。だが、それは
そんな不満を抱えていても、トロイメライ戦隊にアイクが所属しているのは……一重に守りたいものがあるためだ。
自分が育った養護施設の子供達。
育ててくれた施設職員達。
例え、それが普通の形でなかったとしても、彼は守りたいと思っている――
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数時間後。
突如として、
一気に緊張感が増す中、アナウンスが響いて来た。
『
「アイク、シャオ。行くぞ」
ロディが読んでいた本をしまい、仮眠室からシャオが出て来る。アイクもゲームからログアウトし、専用ルームから出る。
格納庫に着いた三人は、各々の機体に搭乗すべく向かって行く。
そうして乗り込むと、機体を発進させた。
ロディの乗るトロイメライ・キルヒェンリート、シャオの乗るヴュルク・エンゲル、そして……アイクの乗るトーデス・エンゲル。三機のM.E.が地下から地上に出て、オアフ島へ向かって駆けていく。
浮遊機構を使用して、海上を走る三機の視界にそれは見えてきた。
黒い身体は鈍く光り、金属のような光沢と機構を持つ巨体が蠢きながら、オアフ島をゆっくりと移動していた。両足はヒレのような形状だが、両腕は人間の腕のような五本指に、顔は鯨に似たその姿は、不気味で気持ち悪さもあり、まさに悪魔と呼ぶに相応しいだろう。背中の二対の鱗状の翼のようなものが、青白く時折光るのもまた、その印象を加速させる。
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