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第13話 事態は突然始まるもの

 アルプ機関の調が来てから、三日が経った。

 その間、特に何事もなく時が過ぎて行った。


(なんだ、大した事ないじゃないか)


 アーレント含めた隊員達がそう思い始めた頃の、午後の訓練終わり。今日の夕食までまだ時間がある。

 休憩時間の間だけでも、コールフィールド姉妹と……特にラヴィニアと会話がしたいと思っていた。完全に下心だが、どうしても彼女と親密になりたいのだ。

 それくらい、惹かれているのだ。彼女に。

 二人はいつも一緒に行動している。だから目立つはず……なのだが。


(おかしいな? どこにいるんだ?)


 普段ならすぐに見つけられるはずの二人が、見つからない。不思議に思っていると、倉庫の方向からセルジュが歩いて来た。

 声をかけようとして、その瞳にゾッとした。

 彼の目は……虚ろだった。


「セルジュ? どうしたんだ? セルジュ!」


「あぁ、アーレントか。なぁ、お前ラヴィニアに惚れてたよなぁ。今なら、いいぞぉ……」


(様? 何を言っているんだ? 同僚だろう?)


 違和感を覚えつつ、アーレントがセルジュに近寄ろうとして不意に腕を掴まれた。予想以上に強い力に驚いていると、そこにいたのは同僚の一人だった。


「なんだ、ビックリさせる……な?」


 そこで言葉が詰まる。何故なら、その同僚の瞳も虚ろだったからだ。


「お、おい。お前どうしたんだよ? なぁ!?」


 流石に身の危険を感じたアーレントは強引に腕を引き離すと、彼から距離を取る。周りを見れば、虚ろな目をした同僚達に囲まれていた。その中にはセルジュもいる。


(何がどうなっているんだ!?)


 動揺しながらアーレントは必死に逃げ道を探す。だが、完全に包囲されていて、逃げ場がない。

 どうするべきか? 冷や汗を垂らしながらアーレントが思考を巡らせている時だった。

 突然、耳に響く不協和音が聞こえて来た。途端、同僚達が次々と倒れて行く。どう見ても異常だった。


「い、一体なにが?」


 困惑するアーレントに、若い女性の声が響いた。


「アーレント・ボーイェン少尉! こちらに! 急いで下さい!」


 声の主はアルプ機関から来たという、ハナだった。彼女は肩掛けの黒いボックス型のスピーカーを抱えながら、アーレントを手招きする。


「こちらへ! 疑似怪獣ハイ・カタストロイが動き始めました! この基地内に、しているんです! それも、とてつもない速さで!!」


「は……?」


 状況が飲み込めない。だが、彼女に着いて行かなければ、自分の身が危険である事だけは本能で分かった。

 体格に似合わず、動きが素早いハナの後に続く。

 急いで向かえば、そこは司令室であり、他にも何人かの隊員達が避難して来ていた。

 その中心で、司令とアルプ機関の調査員達のと紹介されたハリスが話し合っていた。その表情は真剣であり、事態が深刻である事だけは理解できた。


(何が起こっているんだ……?)

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