アルプ機関の
その間、特に何事もなく時が過ぎて行った。
(なんだ、大した事ないじゃないか)
アーレント含めた隊員達がそう思い始めた頃の、午後の訓練終わり。今日の夕食までまだ時間がある。
休憩時間の間だけでも、コールフィールド姉妹と……特にラヴィニアと会話がしたいと思っていた。完全に下心だが、どうしても彼女と親密になりたいのだ。
それくらい、惹かれているのだ。彼女に。
二人はいつも一緒に行動している。だから目立つはず……なのだが。
(おかしいな? どこにいるんだ?)
普段ならすぐに見つけられるはずの二人が、見つからない。不思議に思っていると、倉庫の方向からセルジュが歩いて来た。
声をかけようとして、その瞳にゾッとした。
彼の目は……虚ろだった。
「セルジュ? どうしたんだ? セルジュ!」
「あぁ、アーレントか。なぁ、お前ラヴィニア
(様? 何を言っているんだ? 同僚だろう?)
違和感を覚えつつ、アーレントがセルジュに近寄ろうとして不意に腕を掴まれた。予想以上に強い力に驚いていると、そこにいたのは同僚の一人だった。
「なんだ、ビックリさせる……な?」
そこで言葉が詰まる。何故なら、その同僚の瞳も虚ろだったからだ。
「お、おい。お前どうしたんだよ? なぁ!?」
流石に身の危険を感じたアーレントは強引に腕を引き離すと、彼から距離を取る。周りを見れば、虚ろな目をした同僚達に囲まれていた。その中にはセルジュもいる。
(何がどうなっているんだ!?)
動揺しながらアーレントは必死に逃げ道を探す。だが、完全に包囲されていて、逃げ場がない。
どうするべきか? 冷や汗を垂らしながらアーレントが思考を巡らせている時だった。
突然、耳に響く不協和音が聞こえて来た。途端、同僚達が次々と倒れて行く。どう見ても異常だった。
「い、一体なにが?」
困惑するアーレントに、若い女性の声が響いた。
「アーレント・ボーイェン少尉! こちらに! 急いで下さい!」
声の主はアルプ機関から来たという、ハナだった。彼女は肩掛けの黒いボックス型のスピーカーを抱えながら、アーレントを手招きする。
「こちらへ!
「は……?」
状況が飲み込めない。だが、彼女に着いて行かなければ、自分の身が危険である事だけは本能で分かった。
体格に似合わず、動きが素早いハナの後に続く。
急いで向かえば、そこは司令室であり、他にも何人かの隊員達が避難して来ていた。
その中心で、司令とアルプ機関の調査員達の
(何が起こっているんだ……?)