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第11話 彼らはざわつき、動揺する

 オーストラリア、部隊基地。

 トロイメライ戦隊には敵わなくても、それでもカタストロイ……ひいては疑似怪獣ハイ・カタストロイと戦うために、結成された組織だ。

 そこに所属する、アーレント・ボーイェン少尉は最近ある事を気にしていた。

 それは……同僚である双子の姉妹の事だ。

 レナータ・コールフィールドとラヴィニア・コールフィールド。

 この二人の事が気になって仕方ない。特にラヴィニアの事が頭から離れない。

 自分でも薄々感づいていた……これは恋だと。

 だが、告白するには……そう想い悩んでいた彼の耳にある噂が入って来た。

 それは、アルプ機関から調査員が三名派遣されてくるらしいという話だ。

 ……基本的に、各国で軍隊は保持している。

 だが、信徒アウスの特定を行えるのはアルプ機関だけなのが現状だ。


(ここに調査員が来る? 信徒アウスがいると?)


 アーレントは不快感を覚えた。これはどの軍においても言える事だが、基本的に結束力が求められる組織だ。そこに他者が介入して来る……それも、この隊に人類の裏切者がいる可能性を提示してきたのだから、当然とも言える。


(俺達の仲間に、信徒アウスなんているわけがない!)


 不満を抱えつつも、アーレントは朝礼へと向かう。ここで噂の真偽がわかるはずだ。

 その想いは全員同じだったようで、朝礼前だというのに珍しくざわついていた。

 そこへ、この部隊の司令、アラスター・ウィルバーフォースが現れた。皆、話すのをやめて敬礼する。


「うむ。皆、おはよう。ほとんどの者は知っているだろうが、本日より三名、アルプ機関から調査員が来る」


 噂が真実であった事に、動揺を隠せない隊員達に司令であるアラスターが手で制止する。そして、静かに再度口を開いた。


「動揺する気持ちはわかる。だが、あくまで調査だ。気にしすぎないように!」


 そうして、朝礼の話題は変わり三十分程度で終了した。不満を抱きつつもその場を後にしていく隊員達。その流れの中、アーレントはコールフィールド姉妹の姿を見つけた。二人は談笑しているようで、思わず見惚れてしまう。

 そんな中、見慣れない三人組が司令室に向かって行くのが見えた。

 二人は白人系の男性、一人はアジア系の女性だ。三人とも紺色のスーツを身に纏っている。


(アイツらがアルプ機関の調査員か?)


 見定めるように視線をむけていると、先頭を歩いていた薄紫色のウェーブかかった髪の若そうな男性が、アーレントの方へ視線を向け、敬礼をして来た。

 返すか迷っている内に三人は司令室へと入って行ってしまった。

 茫然とするアーレントを置いて。


 ****


 司令室にて。


「貴様らをアルプ機関の人間として伝えたぞ……トロイメライ戦隊よ」


 声をかけられた三人のうち、先程アーレントに敬礼した青年が口を開く。


「ご協力感謝します、アラスター司令。改めて、私がトロイメライ戦隊隊長、ハリストフォル・ハクルート大尉です。そして、右からデューイ・ベイリアル少尉、ハナ・トキワ少尉です」


 呼ばれた金髪にウルフカットの青年デューイと、焦げ茶色のセミロングの若い女性ハナが敬礼する。彼らを見て、アラスターが深く息を吐く。


「はぁ、管理職の辛い所だ。部下をだます事になるとは……しかし、本当なのだろうな? 信徒アウスがいるというのは?」


「可能性は大きく、否定できない状況です。だからこそ、我々が来たのですよ? アラスター司令」


 そう答えたハリストフォルの瞳は、穏やかそうな見た目に反して鋭かった。

 ――信徒アウス判明まであと……

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