オーストラリア、
トロイメライ戦隊には敵わなくても、それでもカタストロイ……ひいては
そこに所属する、アーレント・ボーイェン少尉は最近ある事を気にしていた。
それは……同僚である双子の姉妹の事だ。
レナータ・コールフィールドとラヴィニア・コールフィールド。
この二人の事が気になって仕方ない。特にラヴィニアの事が頭から離れない。
自分でも薄々感づいていた……これは恋だと。
だが、告白するには……そう想い悩んでいた彼の耳にある噂が入って来た。
それは、アルプ機関から調査員が三名派遣されてくるらしいという話だ。
……基本的に、各国で軍隊は保持している。
だが、
(ここに調査員が来る?
アーレントは不快感を覚えた。これはどの軍においても言える事だが、基本的に結束力が求められる組織だ。そこに他者が介入して来る……それも、この隊に人類の裏切者がいる可能性を提示してきたのだから、当然とも言える。
(俺達の仲間に、
不満を抱えつつも、アーレントは朝礼へと向かう。ここで噂の真偽がわかるはずだ。
その想いは全員同じだったようで、朝礼前だというのに珍しくざわついていた。
そこへ、この部隊の司令、アラスター・ウィルバーフォースが現れた。皆、話すのをやめて敬礼する。
「うむ。皆、おはよう。ほとんどの者は知っているだろうが、本日より三名、アルプ機関から調査員が来る」
噂が真実であった事に、動揺を隠せない隊員達に司令であるアラスターが手で制止する。そして、静かに再度口を開いた。
「動揺する気持ちはわかる。だが、あくまで調査だ。気にしすぎないように!」
そうして、朝礼の話題は変わり三十分程度で終了した。不満を抱きつつもその場を後にしていく隊員達。その流れの中、アーレントはコールフィールド姉妹の姿を見つけた。二人は談笑しているようで、思わず見惚れてしまう。
そんな中、見慣れない三人組が司令室に向かって行くのが見えた。
二人は白人系の男性、一人はアジア系の女性だ。三人とも紺色のスーツを身に纏っている。
(アイツらがアルプ機関の調査員か?)
見定めるように視線をむけていると、先頭を歩いていた薄紫色のウェーブかかった髪の若そうな男性が、アーレントの方へ視線を向け、敬礼をして来た。
返すか迷っている内に三人は司令室へと入って行ってしまった。
茫然とするアーレントを置いて。
****
司令室にて。
「貴様らをアルプ機関の人間として伝えたぞ……トロイメライ戦隊よ」
声をかけられた三人のうち、先程アーレントに敬礼した青年が口を開く。
「ご協力感謝します、アラスター司令。改めて、私がトロイメライ戦隊隊長、ハリストフォル・ハクルート大尉です。そして、右からデューイ・ベイリアル少尉、ハナ・トキワ少尉です」
呼ばれた金髪にウルフカットの青年デューイと、焦げ茶色のセミロングの若い女性ハナが敬礼する。彼らを見て、アラスターが深く息を吐く。
「はぁ、管理職の辛い所だ。部下をだます事になるとは……しかし、本当なのだろうな?
「可能性は大きく、否定できない状況です。だからこそ、我々が来たのですよ? アラスター司令」
そう答えたハリストフォルの瞳は、穏やかそうな見た目に反して鋭かった。
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