拮抗していた両者だったが、切り札が来るまで二秒を残して、勢いよくキルヒェンリートの
後方に飛ばされたのをブースターを逆噴射させて威力を殺す。
回転しながら
変形機構による
十字架の長い部分が三又の槍のように開くと、左右からエネルギーが放出され、剣のようにエネルギー体の刃を生成すると、シトリーの
降下時の威力も加えられ、エネルギー体で出来た刃が少しづつ
その隙を見て、ロディがブースターで急加速して
「エネルギーの塊の上乗せだ。食らうがいい!」
予め充填しておいたエネルギー弾を、ヒビ割れにめがけて放つ。ヒビは亀裂となりどんどん広がって行き、
(
ロディはキルヒェンリートを、更に加速して鎌部分で首部分に刃を当て、そのまま斬り裂いた。途端、青い体液が漏れ出る。そこへ更に地面に突き刺さっている、
塵となり、霧散して行くシトリーを見つめながらロディは目を伏せ、静かに息を吐いた。
「終わったか……」
そこへ通信が入る。表示を見ると、エッダだった。
「何かようか?」
『お疲れ様でした、ブローディア・フォン・エルフシュタイン中尉。
「了解した、至急帰還する」
『その旨、アルプ機関のナディア・ホワイトにも連絡しておきます。また、シャオジェン・レェリャン曹長も要人リネット・アーデンを保護して帰還されています』
「そうか、承知した」
ここで通信を切ると、ロディはキルヒェンリートを操作し移動させていく。
(さて、トロイメライ・キルヒェンリート――夢想の讃美歌だが、とても讃美できるものではないな)
皮肉な現状に苦笑しながら、彼女は振り返ることなく帰還する。ナディアに色々言われる事も、シャオジェンことシャオのフォローを入れる事も考慮しつつ。
……西海岸の夕日が機体に反射する。
日常であれば、感動していた事だろうが……任務後であるロディには、そんな感情は湧かなかった。
(フェリナ・チェニーナについて、詳しく調べる必要があるだろうしな? やる事は山ほどある……か)
ロディは機体を走らせながら、思考を巡らせるのだった。