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第9話 彼らは溶け合い

 アダムの姿をした何かとフェリナは融合し、そして溶け合い人の姿から変異したのをロディも確認した。

 その姿は、これまでの疑似怪獣ハイ・カタストロイと同じくメタリックかつ機械的だが、どこか獅子の雌雄を左右で表すような造形をしていた。


「なるほど? 信徒アウスの心情を反映しているのか」


 分析しながら距離を取り、キルヒェンリートの武器、銃鎌ゲベート・ゲヴェーアヒッペを構える。この武器は、遠距離用の砲身と近距離用の鎌が合体している特殊な形状をしている。

 白基調に青いラインが入っているキルヒェンリートに合わせてなのか、銃鎌ゲベート・ゲヴェーアヒッペも白を基調としている。


「正直、コイツは扱いづらいんだがな……慣れればという奴だ!」


 銃鎌ゲベート・ゲヴェーアヒッペを構えると、銃口を向け特殊な弾丸を放った。だが、障壁バリアに阻まれてしまう。それだけではない。

 こちらの場所を特定したと言わんばかりに、青い光線を放ってきた。

 ロディはギリギリでかわすと、ブースターを噴かせて場所を変える。建物を上手く利用しながら。


(しかし、これは厄介だな。障壁バリアで物理攻撃が通らない? 特定の条件だけでの発動か……それとも?)


 器用に思考を巡らせながら、ロディは次の手を考える。


十字架型複合兵装クロイツ・クリンゲを当ててみるか? だが、ではないし……博打をするには情報が足りんな)


 トロイメライシリーズにとって十字架型複合兵装クロイツ・クリンゲは切り札として使用する事が多い武器だ。多機能な変わりに、自由に何度でも使える代物ではない。

 故に、使いどころを見誤れば……疑似怪獣ハイ・カタストロイを倒す事が出来なくなる。それだけは合ってはならない。


「試させてもらおう……銃鎌ゲベート・ゲヴェーアヒッペ、モードチェンジ」


 ロディは操縦桿を巧みに操作し、砲身のモードを実弾からエネルギー弾へ切り替える。チャージまで数秒かかるため、なおも放たれる青い光線をかわしながら、時間を稼ぐ。

 三秒……二秒……一秒。

 チャージが完了した事を知らせる表示が出たのを確認すると、ロディはキルヒェンリートを回転させて銃鎌ゲベート・ゲヴェーアヒッペの銃口を疑似怪獣ハイ・カタストロイシトリーに向ける。


「食らえ……!」


 充填されたエネルギー弾、白い光線を放つとシトリーが放つ青い光線とぶつかり合う。互いの攻撃が拮抗する。


(ふむ。エネルギー弾に対しては、似たような攻撃で防ぐか)


「ならば」


 音声入力で、座標を指定すると拮抗状態を維持し続けるがロディには懸念があった。


(こちらのエネルギーは有限……だが、向こうはどうだ? このままでは圧し負けるかもしれん……!)


 その考えは的中したようで、ロディの白い光線は徐々に威力が落ちてきているのに対し、シトリーの威力は衰えていない。


「くっ!」


 十字架型複合兵装クロイツ・クリンゲが届くまでまだ時間がかかる。その間をどう持たせるか……ロディは額に冷や汗を浮かべながら、知らずに舌打ちをしていた。


(フェリナ・チェニーナの思想が反映されているのなら……行けるか?)


 瞬時に思考を切り替えると、ロディは横にずれて白い光線を放つのを止める。シトリーから放たれている青い光線が追尾して来るのを、ブースターの威力で避けつつ、銃鎌ゲベート・ゲヴェーアヒッペを構え直してシトリーに向かって急加速して行く。

 鎌部分で障壁バリアに斬りかかる。案の定防がれるが、ロディはそのまま鎌をぶつけ続ける。

 ――切り札到着まで、あと四秒。

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