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第8話 狂気は止まらない

「シャオ、リネット夫人を頼む」


 そうロディが告げた瞬間、どこからかややボサボサ気味な灰色髪の青年が現れた。アジア系の顔立ちが印象深いシャオと呼ばれた彼は、リネットに向けて人懐っこい笑みを浮かべる。


「おれが守るからだいじょーぶだぞ! それより、ロディはどーするんだ?」


 アジア人は幼く見えるというが、それにしてもこの青年は口調が外見に見合っていないのではないだろうか? そう思えるくらいに幼い印象を与えた。


(頼りになるのかしら、この子? それにまだ混乱していて、何もわからないわ……)


 不安になっていると、突然身体が浮いて驚けばすぐ近くにシャオの顔があった。そこではじめて抱きかかえられている事に気づいたリネットだったが、口を開く間もなく、シャオが素早くその場から駆け出した。


「あとは任せろ~ロディ! じゃあ、おねーさんいっくぞー?」


 既に走り出しているというのに、シャオはそう言い残して去っていく。未だ混乱しているリネットを連れて。

 それを確認すると、ロディが拳銃を構えて物陰から飛び出した。


「フェリナ・チェニーナ……武器を捨てろ」


「あらぁ? ロディさんじゃない……どうして? どうして私に銃を向けてらっしゃるの?」


「悪いが、我々を侮らないでもらいたい。あの程度の嘘を見抜けないとでも?」


 睨みつけるロディの視線を受けて、フェリナは……笑い出した。ストリートに響く渡るくらいに。


「ふふふ!! だから人がいないのねぇ? でも……ここであなたを殺せば、あのに貢献できる! 終焉という永遠を頂けるわ!!」


 ロディは、フェリナが既に壊れている事を理解した……もう取返しがつかない程に。


(ここまでしているなら、取れる行動は……)


 フェリナとアダムの姿をした何かが突然をハグをし出した。一瞬目を見開くロディだったが、すぐに拳銃に特製の弾丸を込め、二人に向けて放った。だが……。


「弾かれた……? 障壁バリアか!」


 フェリナが不敵に微笑みながら、ハグをしている相手と共に融解し……人の姿から変異して行く。疑似怪獣ハイ・カタストロイ化が始まったのだ。

 ロディは急いでストリートを駆け抜け、距離を取って行く。向かう先にあるのは、自身のM.E.だ。

 古びた倉庫をカモフラージュにして隠していたM.E.……トロイメライ・キルヒェンリートにロディは右腕のワイヤーを伸ばしてコックピットに近づき、ロックを解除して乗り込んだ。

 画面が明るくなり、起動するや否や通信が入った。無機質な女性の声……エッダからだ。


『ブローディア・フォン・エルフシュタイン中尉。疑似怪獣ハイ・カタストロイをこちらでも確認致しました。個体名をシトリーと命名。速やかな対応をお願い致します』


 相変わらずのエッダのアナウンスを聞きながら、暑苦しいコートを脱ぎ捨てたは操縦桿を握り……動き出した。

 人類の敵を倒すために――。

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