「ふぅ……」
リネット・アーデンは近くの雑貨店から出た所だった。暑い西海岸の太陽が眩しい。
ふと思い出すのは、親友のフェリナの事だ。
ようやく最近元気を取り戻した彼女の、良くない噂を聞いたのはいつだったか。
「怪しい教会に出入りしている」
近所の噂好きの中年の主婦が、そんな話を振って来て驚いたものだ。フェリナは元々敬虔なクリスチャンだ。そんな信仰心の強い彼女が、怪しい教会になんて……とてもではないが、信じられるものではなかった。
真偽を確かめようにも、勇気が出ず……今に至っている。
(アダムを亡くした事と何か関係があるのかしら?)
フェリナの夫、アダムが事故死したのは半年前の事だ。カタストロイという人類の脅威が現れるようになってから、治安はどんどん悪化してきている。それは世界的に見てもそうであり、ここ西海岸でも同様だった。
荒くれ者と化した集団との接触による不慮の事故。
当然彼らは逮捕されたが、アダムの命が戻る事はない。その事実も相まってか、フェリナの落ち込みようは想像以上であった。
(最近急に元気になったみたいだけれど……乗り越えられたのかしら?)
その時だった。見慣れない人物がリネットの前へと現れたのは。
この暑さだというのにロングコートを着ている中性的な人物――ロディ・シュタインが声をかけて来た。
「貴女がリネット・アーデン夫人ですね? 私はロディ。貴女を保護しに来ました」
「保護? どういう、事ですか……?」
困惑し警戒するリネットに、ロディが静かに告げた。
――フェリナ・チェニーナに
その言葉はリネットにショックを与えるのに充分過ぎた。信じ難くて、思わずふらつくリネットをロディが支え、再度告げる。
「フェリナの狙いは……貴女なんです」
何故フェリナが自分を狙うのか?
そもそも、彼女は本当に
情報量の多さに、脳が追い付かないでいるリネットの右腕を、突然ロディが引っ張り建物の陰に身を隠した。
何事なのか飲み込めないでいる彼女の耳に聴こえて来たのは……フェリナの声だった。
気付けば人
ロディに口元を塞がれたおかげか、フェリナの耳に届く事はなかったようだが。
どこから持ち出したのだろう、銃を構えたフェリナとアダムの姿をした
「リネット~! そろそろ私の前に出てきて頂戴! 私のために……ねぇ! お願いよ~」
呼びかける声の中に、感情の抑揚がない事に気づいたリネットの全身に冷や汗が伝う。何故親友であるはずの自分にフェリナが殺意をむき出しにしているのか?
理解できなくて恐怖が走る。
そんな彼女に声をかけたのは、ロディだった。
「大丈夫、貴女は私