付近の建物を気にすることもなく、
「コイツ……充填ってのが無いのか?」
普通、エネルギーを消費して攻撃する場合……充填時間が多かれ少なかれ必要になる。実際、ユリシーズの愛機エルプズュンデもそうだ。
だが、ロンウェーの放つ青い光線にはタイムラグがない。これだけ連発しているというのに、エネルギー切れを起こしていないのだ。
それは大きな違和感だった。
全長を十五メートルは超える巨体を維持するのに、どれだけのエネルギーが必要か想像に難くない。それなのにも関わらず、ロンウェーにはエネルギーを温存するという考えがないのか……今なお放ち続けている。
それを器用にかわしつつ、ユリシーズは逆転の一手が来るのを待っていた。
「そろそろだな……喰らえよ!」
彼が静かに呟いたと同時に、
高速で現れた
その衝撃で横倒しになったロンウェーだが、それでも尻尾のドリルを回転させ、次なる攻撃を行おうとしていた。
「中々しぶといな……だが!」
傍で佇む
「さぁ、終いにしよう……いけぇぇー!!」
ユリシーズが叫ぶと同時に、白い光線が
「こちら
ユリシーズ・バーレイ。
――その正体は対カタストロイ専門の特殊部隊、トロイメライ戦隊の構成員の一人である。
『やぁ、お疲れ様だよ~?
お茶らけた若い男性の声に、ユーリと呼ばれた彼は深く息を吐き答えた。
「了解した、レイン博士。帰還次第詳細を頼む」
『勿論さ~。待っているよ!』
そこで通信が終わり、ユリシーズことユーリは静かに十字を切る。
「ミスタートキトウ。あんたの魂に神の救いがあらんことを。アーメン」
多神教で有名な日本だが、それでも神の加護は届くだろうと判断しているユーリは、再度祈りを捧げると静かにエルプズュンデを動かして帰還する。目指すは、日本での活動拠点だ。
(しかし、トロイメライ・エルプズュンデ――夢想の原罪か。機体としちゃあ好みだが、ネーミングセンスは
愛機の命名に未だ不満を抱きつつ、それでも戦う彼の想いを知る者は――いない。