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第10話

「全部で五人。だけど多分、別で何人か黒幕がいるよ」

「なるほどね。じゃあみんな、ちょっと俺の好きなようにさせてねー?」


 全員が頷いたのを確認してこの部屋全体に結界を張った。俺の計画は、まず騒いで犯人たちをここに集める。そこを拘束して黒幕を吐かせる。犯人たちも全員連れて水の宮に帰って、それぞれ帰すなり犯人は騎士に突き出すなりする。うん、単純だけど一番まともでしょ。犯罪者を海に入れたりしたらウンディーネが怒っちゃいそうだけどー。まあ何とかなるかなぁ?


「わー! みんなが逃げ出そうとしてるー! 俺も便乗して今のうちに逃げよ! 監視がいない今がチャンスだよー!」

「ちょ、ちょっとお兄さん!?」

「大丈夫、だいじょーぶ」


 まずは犯人たちを集めるために騒ぐ。ちょっと恥ずかしくなるレベルで適当な演技だけど、この部屋に近づいてくる気配が五つ。みんなはギョッとして焦っているけど、結界を張ってるから俺も含めて誰にも手出しは出来ないよー。だから安心してほしい。


「おい! 逃げようとしてんのか!? そんなことしてんなら容赦しねー…ぞ……?」


 バァン! と扉を蹴り開けて部屋に入ってきた五人だけど、逃げる気配がない俺たちに後半は首を傾げてしまっている。ほんとにさ、敵に塩を送るのはどうかと思うけど、もっと危機感持つことをおすすめしたい。


「俺たちを攫って売ろうとしているのは君たちで間違いなさそう?」

「他に誰がいるってんだよ」

「まあそうだよねぇ。分かってるけど一応確認しただけだよ。率直に聞くけど君たちの背後にいるのは誰? 言わないなら無理矢理吐かせるって手もあるんだけどー、手荒な真似はしたくないから答えてくれると嬉しいなぁ?」


 手荒なことはしたくないけど理由のない犯罪はダメだよね。理由があるなら話は違ってくるけど、今回は自分たちの利益を求めているだけのようだから。このあたりには精霊の気配がないし……それを意味することはのちに分かると思う。


「手荒な真似はしたくない? それはこっちのセリフだなァ。生意気なヤツには躾が必要だ思わないか?」

「分からせるしかないんだろ」


 そっか、それは残念だね。まあこの人身売買の件について、裏で誰が手を引いているのが誰なのかはあとで調べればいいことだよねー。


「よし、じゃあ仕方ないから一旦ここから離れよっか。こんな汚い所にいつまでもいたくないからねぇ」


 扇を手のひらに打ち付けると景色が変わり、水の宮にある玉座の間に転移した。突然の景色の変化に何が起こったのかとその場にいた全員が目を白黒させている。


 宮に遊びに来ている子たちが多かったようで、俺の気配を感じたらしい精霊たちも玉座の間に集まってきた。


「ナギサ様。おかえりなさ……うわっ!」

「ただいまルー。ごめんね、不快なのは俺も一緒だから我慢してねー?」


 集まってきた精霊たちは俺の方を見て嬉しそうにしたかと思ったら俺たちを攫った人たちの方を見て顔を歪めている。不快だよね、彼らと同じ空間にいるのは。


 扇を広げてこの部屋を仰ぐようにすると空気が浄化され、精霊たちの表情が和らいだ。


「なっ、なんだ……!? なぜこんなに精霊が集まってやがる!」

「ここは海の中にある俺の宮だよー」

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