そう言って宮の中にいる精霊みんなを外に出す。結界も変えて宮の中が見えないようにした。まさか、まさか俺が泣いてるなんてねー。
そう思ったのにルーに指摘されて顔に触れてみたら何故か濡れていた。
「なんで……? こんなの何年ぶり? ほんと情けなさすぎ……」
ひとりそんなことを呟く。何年ぶりってほどでもないかな? 歳を取ったら涙腺が脆くなるってほんとだね。精霊王って何千年は普通に生きるから。
「っ、あははー……寂しいのかな、俺。大好きな家族に会えなくなって、大事な家族を置いてきてしまって悲しいのかな? 俺もう子供じゃないのになー。家族に会えなくなって泣くって子供だよねぇ……」
そんな風に一人で呟くも誰も答えてくれる人はいない。精霊たちは我が子のような存在。泣いてるところなんて見せたくなかった。家族はこの場どころかこの世界にいない。誰も答えてくれないのが余計に悲しいね。
いつも通りそんな軽い調子のナギサだが、その青い瞳からはポロポロと次から次へと涙が零れ落ちていた。涙で濡れた顔でさえも神秘的なまでに美しいが、本人は恥ずかしいだけなのか両手で顔を覆った。彼は普段かなり軽い調子で家族なんて気にもしていなさそうだが、これで仲間や友人、家族など身内は誰より大事にする質だ。そんな彼が大事な家族を残して一人だけ逝ってしまって平気でいられるはずがない。
「ふふっ、この歳の男が泣いても見苦しいだけだよねー。でも、ね………寂しいよ。死んだと思ったのに見知らぬ土地にいるし、何をするでもなくひたすら時間だけが過ぎていく。寝てただけだけど。それは別にいいんだけどねー? ただ、いろいろ感情が混ざっちゃってる……」
もちろん寂しいとか悲しいとか思ってる。だけどその中にやっとあの
疲れ、睡眠不足、多忙、そして何より自分が背負うものの重圧からくるストレス……毎日のように吐いていたあの日々に比べれば、ね。解放されたことへの喜びがあっても許してほしい。
だけどね、俺はその苦しみから逃れるために大事な
悲しいよ、寂しいよ。だけどそれ以上に申し訳ない。大好きな家族の心に傷を付けてしまったことが。メンタルはたぶん強い俺が耐えきれなかったくらいの重圧を、愛する弟に押し付ける形となったことが。きっと家族はこれまで通りに生きていくことは出来ないんだろうなって思うよー。死んでしまった以上どうにもならないけど……それでもほんとに、俺のことなんて忘れていいから幸せになってね。俺には祈ることしかできない。
「ふーっ………父さんも母さんも、直人くんも。───心の底から愛してるよ。どうかこの先の未来に幸あらんことを」