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第5話

 ぼんやりと立ち上がって精霊に時間を聞いてみると、俺が眠ってから半年が経ったって。ヤバいねー? ずっと寝てたよ。この世界は日本と似ているところもあるからその辺りは分かりやすい。日本からの転生者に優しい世界だね。


「お腹は空かないけど人間は食事を必要としてたから何か食べたいなー。でも確か宮に食べ物なんておいてなかったよねー?」


 キッチンはなぜかあるのにね? 精霊たちと戯れながら宮を散策してみる。暇だからね。宮はかなりの広さがあるから一人で住むには寂しくなるんだけど、精霊たちは入れるようにしてあるから問題ないね。立ち入り禁止にしてる時もあるけど。


 宮の中には空気がある。結界を張ってあるからガラス窓というわけではないけど、廊下に出れば海の中が見れるようになってる。精霊がちゃんと管理してるから前世ではネットでも見たことがないくらい綺麗なんだよー。魚もたくさんいるし精霊たちも泳いだりして遊んでる。


「海といえば……直人なおとくん、元気にしてるかなー……」


 直人というのは俺の弟。俺が助けた子のことね。幼いって言っても俺が死んだ時点で十二歳だった。五歳差だったから俺からしたらかわいい弟だったよ。二人兄弟でかなり仲が良かったと思う。直人くんには俺のことなんて忘れて良いから幸せに生きてほしいなー。直人くんだけじゃなくて父さんと母さんもだけどね。家族仲はほんとに良かった。


 でも愛されてたの知ってるからね。みんな悲しんでるだろうなーとも思う。親孝行出来なかったのは申し訳ない。直人くんとももっと遊んであげたかったなー。この前のアルフォンスくんを助けたのも直人くんと年齢が近そうで、姿が重なったからなんだよね、一番の理由は。もちろん見殺しにしたくないって気持ちもあったけどー。


 そっか……もう会えないんだね。父さんにも母さんにも直人くんにも。こうして考えてみると悲しいねぇ。半年経って眠っていただけではあるけどやっと現実を受け止められたって感じかなー?


「……ナギサ、さま」

「ん? どうしたの、ルー」


 起きてからずっと海を見ながら宮の中を散歩してたけど、まだまだ終わりが見えない。いつの間にか傍にはルーがいて、ひどく動揺ししたような心配しているような顔をしていた。子供は笑ってるのが一番だよ? 子供にそんな顔は似合わないからさ。


「大丈夫……ですか?」

「なにがー?」

「その、涙が……」


 涙……? え………なんで、俺は泣いてなんて……


「……っ! ……あはは、大丈夫だよ? ちょっと眠くて欠伸しただけー。君はまた遊んでおいで」

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