「……というわけで何か知ってることはない? ───ウンディーネ」
「というわけでって、なんの説明も受けてないんだけどぉ」
「でも俺たちのことを見てたでしょ?」
海の奥深く、精霊王の住処のひとつである水の宮。その玉座の間に水の大精霊ウンディーネを呼んだ。さっきのことを聞きたいからね。水の大精霊なんだから水場で起こった出来事はすべて把握しているはずだよねー? そんな思いを込めて微笑むと顔を引き攣らせた。
「呪いのことを言ってるならわたしは知らないよぅ?」
「中位以下の精霊はたくさんいるから殺されちゃっても俺はすぐに気付けないんだけどね、俺よりは管轄域が狭い大精霊のウンディーネなら知ってることもあるかなって思ったんだけど……ほんとに知らない? ウンディーネが知らないなら水属性の子じゃないのかなぁ。あれが呪いとも限らないし……もちろん精霊殺しによる呪いだった場合、どの子がやられちゃってたとしても犯人は絶対許さないけどー」
俺はすべての精霊の親的な存在だよ。その俺の親たる存在は世界。大精霊が生み出した子でも俺にとっては自分の子とそう変わらない。精霊はみんな仲間で俺の守るべき相手だよ。それは俺が転生者であっても関係ない。
精霊も恋はする。この世界に存在してる生き物だからね。そこに種族は関係ない。まあ別の種族同士で恋人関係になったりってあまりないんだけどねぇ。結局何が言いたいのかというと、誰が産んだ精霊かまだ分かってないけれど精霊である以上、誰かに殺されたのだとしたらそいつはこの世から消えていただきたい。
「なにか分かったらちゃんと教えるからぁ。だからそんなに殺気出さないでよぉ……ふだん怒らないくせに仲間思いだよねぇ」
「助かるよ、ウンディーネ。じゃあ用件はそれだけだからまたねー」
「ええぇ! ちょっとまっ、」
玉座にだらーっと座ったまま手を振って、腕置きにパシンッと扇を打ち付けるとウンディーネは
俺の意思ひとつで人を招いたり追い出したり出来るなんて、ほんと便利だよねー。
サッと自分の部屋まで転移して布団に寝転がる。それぞれの場所に合わせた宮の造りや装飾にされてるから、この宮は水路がある料亭? みたいな赤い橋とかがある和風の造りになっている。床も畳にしてあるしね。だけどとにかく豪華。
元は日本人だからこういうのは落ち着いていいよー。この宮は結構好き。しばらくここに滞在しようかな。
そうして今度こそ俺は眠りについた。後から聞いた話だと、俺に追い出されたウンディーネは怒っていたらしい。水の精霊が身振り手振りで教えてくれて可愛かった。
◇
「んん……いま何時……?」
かなり、かなーり寝た気がする。精霊は食事も水分補給もなにもいらないので結構寝てしまった。俺は前世でも食事とか取らなくて良いならいつまででも寝ていられるくらいだったからね。眠ると色々スッキリするからいいんだよ。暇さえあれば寝てるか本読んでた。そういえば宮にもそれぞれ書庫があったよね?