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第3話

「はい、これでもう大丈夫だよ」

「あ、ありがとうございます! 本当にありがとうございます! この御恩は決して忘れません!」

「気にしなくていいよー。君たちの名前は?」


 多分ファーストネームしか名乗ってくれないと思うけど一応聞いておくことにする。


「申し遅れました。私はジェソン、妻はアンネ、息子はアルフォンスと申します。貴方様のお名前もお聞かせ願えますか?」

「俺はナギサ。さっきも言ったけど精霊王だよー。俺は堅苦しいのは嫌いだし、そんなに畏まらなくていいよ。それよりジェソンさん、少し耳を貸してくれる?」

「はい」


 律儀に返事をしてこちらに近寄ってきてくれた。『まだ絶対とは言えないし気のせいだったら良いんだけどねー? この子……アルフォンスくんは多分呪われてたよ。俺は治癒魔法じゃなくて浄化魔法を使った。黒い靄みたいなのが首に巻き付いてたんだよ』と言うと、驚愕に目を見開いて俺の方を凝視してきた。


 信じがたいよね、呪いだなんて。まだ絶対とは言えないんだけどねー。呪いは精霊を殺すことでその属性の力が対象に巻き付く。精霊殺しなんて常人にはできない。精霊はどの種族よりも強い力を持つからね。よほど弱っていたなら話は別だけど。


 にわかに信じがたいけどもし精霊殺しによる呪いだったなら……俺は絶対にそいつを許さない。精霊王というのはすべての精霊の親でもある。同じ精霊である俺だからこそ呪いだと気付けたのかもしれないけど……それなら水の精霊たちが出て行かなかったのも分かる。精霊殺しは容易にできるものではないけど代わりにそれを可能とし、呪いへと変化させたなら少なくとも中位精霊以上でないと対応できない。


 もちろん殺されたすべての精霊が呪いとなるわけではないんだよー? それを望まない限り世界の一部へと戻るだけ。だけど大体は呪いになるかな。


「それは……本当ですか?」

「うん。絶対そうとは断言できないけどほぼ間違いないと思ってる。君たち高貴そうだから今後も気を付けた方が良い。精霊が関わっている可能性が高い以上、俺もできるだけのことはするから。それと、まだ完治はしてないからね。とりあえず悪化することはないと思うけど、完治させるのは結構大変だから詳しいことが分かったらまた対応するよ」


 と言っても、また同じようなことがない限り今のところは行動に移すつもりはないけどね。でもちょっと彼らが心配。一時的な呪いの浄化は本当は良くない。可能なら一気に浄化しきるのが理想的なんだよ。だけど今の状況じゃこれくらいしかできないんだよねぇ……完璧に呪いを浄化させるには調べないといけないこともあるし、俺も相当力を使わなきゃいけない。転生したばかりの俺ではそれはちょっと厳しいかな。体は魔法を使うことに慣れてるんだけど脳の処理が追い付かないから。


「ありがとう、ございます……なにかあれば直ぐにご報告しますので、その時はよろしくお願い致します」

「うん。普通に病気の可能性もあるから体に気を付けてねー」

「はい」


 笑顔で手を振ってそのまま海に戻っていった俺だけど、転生初日から大変なことに巻き込まれたねー? 俺は人間の世に詳しくないからちょっと調べてみてもいいかもしれないね。

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