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第2話

 ちなみに今は海の中にいるんだー。精霊王ってすべての精霊の住処に宮があるんだよね。招いていない相手には見つけることすら出来ないっていうすごく便利な仕組み。


「そういえばルーって人型だったね。子供だけど。水の精霊だっけ?」

「ええ。貴方様が生み出してくださったのですが……自分で生み出した精霊くらい忘れないでくださいよ」

「ごめんごめん。俺はまた寝てるよ。ルーも遊んでおいでー」

「はぁ……そうですね」


 精霊は基本的に自由。俺の趣味でもある睡眠時間がたっぷりで嬉しい。精霊に睡眠は必要ないけど寝てはいけないわけではないし。さっそく寝ようかなー。


「──水の精霊様! どうかこの子を救ってください!」


 ……寝ようと思ったんだけどなー。地上の方から声が聞こえるね。精霊はそれぞれの属性にあった魔法が使える。だからこうして頼みごとをしに来る人もたまにいる。水の精霊だと水があるところにいればどんな水場の状況も分かる。だけどあの人たちはわざわざ海まで出向いてきたみたいだね。


 精霊王は属性関係ないから様々な情報が手に入る。結構おもしろいものだよ?


 それで、頼みごとに来た人だったね。水の精霊が使える魔法には水中で呼吸ができるとか治癒魔法とかがある。病気とかかな?どの精霊も動く気なさそうだねー。このままでは気になって眠れないから俺が行こうか。


「こんにちはー。どうしたの?」


 そうそう、俺の服装もなんかこの世界に合った衣装に変わってたんだよね。それと精霊王って代々受け継がれてる扇があるらしくて、扇に魔力を流して魔法を使うことが多いみたい。もちろんなくても使えるけど、この体は常に持っておくことに慣れてるっぽい。なんていうか、かっこいい感じの見た目なんだよね。何がどうなって転生したのか知らないけど、異世界転生って色々と面白いねぇ。


「あなたは水の大精霊様ですか!?」

「あーごめんね。俺は大精霊じゃなくて精霊王だよ。それで、なにかあったの?」

「……え、精霊王!? あっ、はい! この子は私たちの子供なんですが医者に診せても治し方が分からないと言われてしまいまして……精霊様なら治せるかもしれないと思ったのです。どうか、どうかこの子を救ってはいただけないでしょうか……!」


 ……あのさ、随分と高貴そうな親子だねぇ? 高位貴族とかなのかもしれない。地位が高い人と関わるのは面倒なんだけど……このまま見殺しにするのは可哀そうか。


「うん、たしかにこの子はもうあまり持たなかっただろうね。治療法がまだ見つかっていないような重病なのかな? まあ良いよ、俺が治してあげる」

「な、治せるのですか?」

「うん。じゃあちょっと失礼して……」


 その男の子の顔の上に広げた扇をかざし、パチンッと勢いよく閉じる。すると黒い靄のようなものが晴れると同時にその子の病気がされたのを感じた。精霊は他の種族には分からないことでも見えたり感じたりする。それも強さにはよるけどね。

 ただ彼ら、やっぱりかなり高貴な血筋か特別な立場にありそうだね。訳ありらしい。

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