「
楽しかった文化祭の余韻なんて、どこかへと消えてしまった11月初め。爽やかな青が広がる秋空の下、中学生の僕らは学校の校庭でドッジボールをしていた。
格好はジャージにハーフパンツ。つまるところ僕、
「ほらっ、大ちゃんってば早く~」
「あ。う、うん。わかってるって……!」
ブロンドとブラウンが混じる癖っ毛の髪を揺らしながら急かす親友に、僕はボール片手に笑って返事をした。
だけど……はぁぁ。実は僕、ドッジボールが苦手なんだよね……。
まぁマラソンに比べたら走らなくてもいいし、遊びの延長みたいだし、楽しいは楽しいんだけどさ?
でも——
「ヒロ~☆」
ラインパウダーで描いた白線の向こう側。相手コートに立って、フルパワーで僕へと手を大きく振る女の子にため息が出た。
彼女は青い
違うのは、僕らのハーフパンツよりも
手足はスラリと長いし背はそこそこ高いけど、成長期をこれから迎える僕にとって見れば、いずれ抜かせる範囲だ。
「もういいや、えいっ!」
僕は目をつむりながら、ボールを相手コートへと投げつけた。
「うわ! なーんてね? 余裕のユウきゅん!」
なんだよ“余裕のユウきゅん”って。
僕はげんなりしつつ、ゆっくりと目を開けた。
ユウは僕の球を上手くかわしたようだ。いちいちそんなことをする必要はないのにな、と僕は思った。
だって彼女は……あ。
「あ~当たっちゃったか~」
「ご、ごめん。大丈夫?」
「なんで謝るの。平気平気!」
僕の球をキャッチしそこねたクラスメイトの女子が、そんな風に笑う。そして困り眉になる僕の前から立ち去ると、外野に向かう彼女と入れ替わるように、バウンドしていたボールをチームメイトの男子が拾いにやって来た。
僕へと自慢げに歯茎を見せるユウの
そう。1人場違いな格好をしているユウの正体。それはなんと幽霊である。
だからただ体操着を忘れて公開処刑されているわけじゃなくて(というか学校はそんな酷いことしないし)、ユウは単純に幽霊。時と場所と場合に合わせたTPOなんて関係のない存在なんだ。
ちなみにユウ
それでユウは、そのセーラー服とツインテールがアイデンティティなんだってさ。って、なんで僕はそんなことを考えているんだろう。
気を取り直して、僕がボールを当てた女子……いや、その子の後ろに立っているおじいさんを見た。
悲しそうに背中を丸めている。
ああー罪悪感! だからドッジボールは苦手なんだよ。
再びおじいさんから視線を相手コートへと移すと、おそらく僕だけに見えるであろう世界が広がっていて、お腹が痛くなった。
孫を守ろうと腕を広げて立ちふさがるおじいさんに、両手のシワを合わせて神様に祈りを捧げるおばあさん。それから意気揚々と肩を回す、若々しいおじいさんやおばあさんも居る。
みんなきっと、クラスメイトたちのご先祖様だろう。
……はぁ、もう。すごくやりにくい。
こうして今日も僕は、幽霊が見える自分の体質に手を焼くのだった。