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第14話

 捜査局はいくつも枝分かれをして部門が配置されている。フロアごとにわかれてはいるが雑多な部署を簡易的に区分けしただけで席に着けばフロアの人間の顔が見えるようになっていた。

 昨夜のことを思い出しジルはため息をついた。

 相棒のオリビアはほとんどの確率で決まった時間に職場にやってくるがどんな顔で会えばいいのかわからずパントリーでお湯を沸かしてカップにコーヒーをいれることで無駄に時間を費やしてからデスクに戻ってみたが、見渡した中に彼女の姿はなかった。

 いっそのこと訊いてみようとも思っただけに少しばかり拍子抜けだった。

 壁にかけられた時計の針は決められた時間を過ぎてフロア内ではすでにそれぞれの職務に身を投じている。

 彼女が遅れてくるなんてめずらしいなとは思いつつも念のためなにかあったのか確認したところ彼女はリフレッシュ休暇中だという。

 リフレッシュ?

 オリビアが?

 仕事が生きがいのような彼女が?

 休暇?

 いや、まあ。こんなこともあるか。

 それから数日経った今日も彼女は仕事を休んでいた。

 近くのやつに理由を訊けば「さあ。あいつが休むなんてめずらしいな」「確かに」口を揃えて皆知らないと言う。

 相棒としてこれは見に行った方がいいのではないか。

 迷いに迷っているうちに翌週顔を見せた彼女の目の下にはくっきりと隈ができていた。

 少しばかり痩せたようにも思える。

「オリビア?」

 化粧で隠してはいるが俺からすれば明らかに顔色が悪く見える。

「なに?」

 目を合わせない彼女を掴んで引き寄せると目を逸らした。

 彼女は基本的に自身のことを話そうとしない。

 なにかがあってもそうだ。

 それは彼女なりの身の振り方なのかもしれない。

 一定の距離を保って接していた。

「なにかありました?」

 泣きそうに歪めた顔は一瞬で消えてため息をもらしていた。

「どうしてそんなことを。あんたそんなに私が好きなの?可愛い奴ね」

「うるさい俺はただあんたが心配で」

「大丈夫大丈夫、私死なないから。あんたは自分の心配でもしときなさい」

 痛いところを突かれて否定するように開いた俺の言葉を軽くあしらって嘘くさい笑みを貼り付けた彼女にとって自分はそういう話をする対象ではないのだと突きつけられたような気がしてそれ以上踏み込むことができなかった。

 それよりも話を逸らされたことが気になった。

 いや、正確に言えば気に入らなかった。

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