目の前で起きた出来事に、呆気にとられ立ち尽くす
本来ならば、処罰を下すのは上位の
「――おい、お前! ここを何処だと思ってやがる。稽古のためとはいえ、戒律を破ったのは事実。つまり俺に何をされても、文句は言えないということだよな?」
「すっ、すまない悪気はなかったんだ……」
低く重みのある声量で話す
「悪気はない? なるほど、それで済むなら
「ほっ、本当だ。今後、ここでの稽古はしない。約束は守る、だから許してくれ」
このように圧倒する姿を窺えば、戒律を破った者は無位の修行僧。しかし、装束から確認できたのは、
こう思われるも、理由は別にあるのかも知れない。一つは自らの行いを悔い改め抵抗しないこと。もう一つが尋常でない力で抑え込まれている。現場の状況から考えれば、この二つが大方の事情に違いない。
「許してくれだと? 貴様は何を甘えたことを言ってるんだ?
「確かに……私は戒律を破り、それだけの行いをした。殺されても文句は言えないが、やらなければならないことがある」
上位の僧に顔を近づけ、冷ややかな表情で話す
「やらなければ? 貴様にそんな権利がどこにあるんだ。といいたいが、許してやる代わりに喉でも潰してしまおうか?」
「ぐぅぅ……喉をつぶされては指揮がとれぬ。それだけは勘弁して貰えないか。見たところ、そなたは
「はあ? 何を寝ぼけたことを言っている。俺が欲しいものは、
「そこを何とか……お願いできない……ものか」
やっとの思いで言葉を伝えようとする僧侶。あと数分もすれば意識を失うに違いない。やがて目はぼんやりと一点を見つめ、瞳孔が見え隠れする……。
「じゃあな、これで最後だ。自分のした罪の罰を受るんだな!」
――そんな時だった‼
「何をしているの――、
声と同時に、突如として現れた人影。この
「どうしたのよ
「いっ、
「こ、これは俺が……?」
一体どういう状況なのか、本人にも理解し難い光景。その雰囲気から窺えば、どうやら無意識のうちに行動していたようだ。
「――がはぁっ! すまない、助かった」
「いいえ、こちらこそ
その瞬間、僧侶は締め上げられた束縛から解放され、激しく咳き込みながら息を取り戻す。これにより、申し訳なさそうな表情を浮かべる
「そういう事だから、
「わっ、分かったよ。
そう言い残し、
本来であれば、弓を放った聖人に対して怒りをぶつけるのが正しい姿。とはいえ、二人が無事であったことが何よりも嬉しいのは事実。安堵の気持ちを胸に抱きつつ、姿が見えなくなるのを見届けた。
こうして、しばらく静寂に包まれる空間の中。どうして、