この世に理想郷が生まれた由縁、やがて解き明かされる真実。この物語の始まりは、ある人物が残した備忘録から始まった。
🍀みゆき🍀
現代ファンタジー現代ダンジョン
2024年11月09日
公開日
3.1万字
連載中
【あらすじ】
物語の舞台である極楽の荘厳。この大陸は如何にして生まれたのか?
そんな謎に包まれた大陸であり、なくてはならない存在。
数千年前、もしくは数億年前になにが起きたというのか?
その全ては、ある人物が残した備忘録から始まった……。
1つ1つに記された文字を解読していく度に、突きつけられる真実。
心安らぐ大陸でありながら、儚く切ない極楽の荘厳と呼ばれた理想郷。
真実を理解するには、文字を解読する必要がある。
読み解くには数年の時が必要かも知れない。
備忘録という古文書に記されていた謎とは……。
こうした5章に纏められた構成。それは【五天の物語】
*1章 生天編【この世に理想郷が生まれた由縁】
*2章 世天編【人々と共にあり続ける極楽の荘厳】
*3章 浄天編【失われた時を願う寂静な孤独】
*4章 義天編【心の拠り所、信じたが故の悲しき想い】
*5章 義天完結編【真理とは何か、明かされる秘められた真実】
そして、メッセージを記した4つの物語。つまりは三世物語。
『現世の恋』『両親の恋』『千年前の恋』『未来の恋』
そんな切なく心憂い恋愛を大前提とした中華ファンタジー。
第1話 はじまりの大地
――ここは何処までも永遠に続く果てしない大地、名は極楽の荘厳という。
そこには無数に連なる池が点在しており、周辺一帯へ蓮華が美しく咲き乱れる。その浄化された水面には、鏡のように晴天の空が青々と映し出され心を魅了する。
そんな美しき大地の中心に、虚空山と呼ばれた大きく聳え立つ山がある。その天にもとどきそうな聖なる領域には、邪悪な穢れから守るように大陸が存在したという。
これらを含め、果てしなく広がりを見せる極楽の荘厳。この場所で人徳をよりいっそう高めるため、幾千もの修行僧達が日々過酷な修練に明け暮れる。こうした偉大なる聖天を目指す者達だけに、この場所は存在していた。
その大地はそれぞれが、二つの大陸に区分されていたという。
一つ、虚空山の大陸付近へ、隔離された地底のような場所があるのではないか。そう噂されるも存在は不明であり、不確かな内容。とはいえ、幾人かの帰還した者によれば、地獄のような光景だという。
二つ、全ての衆生が安らぎを覚えるような、美しく咲き乱れた緑豊かな極楽の荘厳。周りは海で囲まれ、遥かなる大陸が何処までも続く。
まるでその情景は、天空を漂う雲のよう。人々からは天に浮かぶ理想郷。このように譬えられていた。
――ところが、その一つの大陸で重大な問題が起きようとする……。
その場所は空へと高く聳える虚空山の頂点。天帝と謳われた聖王が住み、風情ある七堂伽藍の建物が所狭しと建ち並ぶ。こうした聖なる場所に、突如として現れる一人の人物。
並々ならぬ雰囲気から察するに、その人物は聖なる人物であろうか。もしくは邪を宿した存在か。状況は掴めぬまま突然、声高らかに掌を握りしめ襲い掛かる――!!
『お前だけは、――お前だけは絶対に許さない!! この手で俺が、調伏してやる』
『何を戯けたことを、はたしてお前に倒せるのか? だが私も、そこまで鬼といった訳ではない。もし許しを請いたいと願うなら、見逃してやらん事もないぞ』
『――誰がお前になど、上等だ!!』
『やれやれ、余り気乗りはしないが仕方ない。望みとあるならば、息の根を止めてやろうではないか!』
強く握る拳を大きく振りかぶり、両者は闘気を放ち激突する。
「――――――――――――――――――――――――――!!!!」
瞬刻の如く、お互いに激しくぶつかり合う拳。響き渡る衝撃の波動は、風圧と共に周辺一帯へ駆け抜ける。その煌びやかに輝く光、黒く染まる闇の気鋭。2人の力は同等であるかのように、暫く均衡は保たれる。
――こうして両者は想いを拳に込め、眼前で睨みあう…………。