この世に理想郷が生まれた由縁、やがて解き明かされる真実。この物語の始まりは、ある人物が残した備忘録から始まった。
みゆき
現代ファンタジー現代ダンジョン
2024年11月09日
公開日
28,448文字
連載中
この物語は、太師とそれを支えた女性。
険しい道のりの中、2人が共に歩んできた旅の物語。
御霊の想いは惹かれ逢い、遥か久遠の彼方から訪れる。
愛し合う心情は、時には切なく悲しくて。
やがて恋慕の情は、二人の時を繋ぎゆく。
これは、そんな儚く心憂い2人の物語である。
けれど、もしかしたら貴方の物語かも知れない。
さあ、いざ共にゆきましょう。
疲れた心を癒やし、この哀しみに満ちた世を忘れるために。
そして、これを読み少しでも何かを感じてくれたなら、貴方が想う人へ優しき気持ちを差し伸べて欲しい。
この世に、希望はないかも知れない。あるのは格差の社会だけ。
裕福な者だけが、私腹を肥やし存続できる世界。
人は常に羨み嫉み、周りの言葉に流されるもの。
そして理解得ないまま蔑み虐げる。だから争いが絶えないのかも知れない。
さりとて、希望を失ってはいけない。
どうしようもない世だからこそ、叶えられるものがあるんじゃなかろうか。
優しき想いを後世へ伝えたいと願う気持ちが……。
それは誰もが持ち得た想い、慌ただしい時の中、今は気づいていないだけ。
辛く苦しい世の中だからこそ、努々忘れること勿れ。
その想いがあれば、いつの日か貴方の望む未来が必ずや訪れると信じて。
共に生まれた魂ならば、諦めず今世を見守り生きてゆきましょう。
――この小説の簡単な説明書――
物語の舞台である極楽の荘厳。この大陸は如何にして生まれたのか?
そんな謎に包まれた大陸であり、なくてはならない存在。
数千年前、もしくは数億年前になにが起きたというのか?
その全ては、ある人物が残した備忘録から始まった。
1つ1つに記された文字を解読していく度に、突きつけられる真実。
心安らぐ大陸でありながら、儚く切ない極楽の荘厳と呼ばれた理想郷。
真実を理解するには、文字を解読する必要がある。
読み解くには数年の時が必要かも知れない。
備忘録という古文書に記されていた謎とは……。
こうした5章に纏められた構成。それは【五天の物語】。
*1章 生天編【この世に理想郷が生まれた由縁】
*2章 世天編【人々と共にあり続ける極楽の荘厳】
*3章 浄天編【失われた時を願う寂静な孤独】
*4章 義天編【心の拠り所、信じたが故の悲しき想い】
*5章 義天完結編【真理とは何か、明かされる秘められた真実】
第1話 はじまりの大地
――ここは何処までも永遠に続く果てしない大地、名は極楽の荘厳という。
そこには無数に連なる池が点在しており、周辺一帯へ蓮華が美しく咲き乱れる。その浄化された水面には、鏡のように晴天の空が青々と映し出され心を魅了する。
そんな美しき大地の中心に、虚空山と呼ばれた大きく聳え立つ山がある。その天にもとどきそうな聖なる領域には、邪悪な穢れから守るように大陸が存在したという。
これらを含め、果てしなく広がりを見せる極楽の荘厳。この場所で人徳をよりいっそう高めるため、幾千もの修行僧達が日々過酷な修練に明け暮れる。こうした偉大なる聖天を目指す者達だけに、この場所は存在していた。
その大地はそれぞれが、二つの大陸に区分されていたという。
一つ、虚空山の大陸付近へ、隔離された地底のような場所があるのではないか。そう噂されるも存在は不明であり、不確かな内容。とはいえ、幾人かの帰還した者によれば、地獄のような光景だという。
二つ、全ての人々が安らぎを覚えるような、美しく咲き乱れた緑豊かな極楽の荘厳。周りは海で囲まれ、遥かなる大陸が何処までも続く。
まるでその情景は、天空を漂う雲のよう。人々からは天に浮かぶ理想郷。このように譬えられていた。
――ところが、その一つの大陸で重大な問題が起きようとする……。
その場所は空へと高く聳える虚空山の頂点。天帝と謳われた聖王が住み、風情ある七堂伽藍の建物が所狭しと建ち並ぶ。こうした聖なる場所に、突如として現れる一人の人物。
並々ならぬ雰囲気から察するに、その人物は聖なる人物であろうか。もしくは邪を宿した存在か。状況は掴めぬまま突然、声高らかに掌を握りしめ襲い掛かる――‼
「お前だけは、――お前だけは絶対に許さない‼ この手で俺が、調伏してやる」
「何を戯けたことを、はたしてお前に倒せるのか? だが私も、そこまで鬼といった訳ではない。もし許しを請いたいと願うなら、見逃してやらん事もないぞ」
「――誰がお前になど、上等だ‼」
「やれやれ、余り気乗りはしないが仕方ない。望みとあるならば、息の根を止めてやろうではないか!」
強く握る拳を大きく振りかぶり、両者は闘気を放ち激突する。
「「――――‼」」
瞬刻の如く、お互いに激しくぶつかり合う拳。響き渡る衝撃の波動は、風圧と共に周辺一帯へ駆け抜ける。その煌びやかに輝く光、黒く染まる闇の気鋭。2人の力は同等であるかのように、暫く均衡は保たれる。
――こうして両者は想いを拳に込め、眼前で睨みあう…………。