屋台で串焼きを堪能したあと、わたしたちは寄り道せずに目的の場所へと辿り着く。フォルトナ共和国の冒険者ギルドだ。
「ここも大きいわね……」
いや、大きすぎる。
王国のギルドの三倍近くあるような気がする。これはもう、ちょっとした小城だ。
「入るぞ」
ロックが先導し、ギルドの中へと足を伸ばす。
ギルド内部は、街中と変わらず大勢の人たちで賑わっていた。
「これ、全員……冒険者なの?」
「大体な」
ギルド職員や依頼主、それに商人などを除けば、ここにいるほぼ全員が冒険者のようだ。
一つの国に、こんなにたくさんの冒険者が集まるものなのかと、わたしは驚きを隠せない。
「……ねえ? フォルトナの周りって、ひょっとして危険な魔物だらけなの?」
魔物が多いから、冒険者も仕事に困らない。
だからギルドが賑わっているのかもしれない。
すると、ロックが否定する。
「それも絶対に無いとは言い切れないが、一番の理由は別にある」
「別に?」
「ああ。フォルトナが共和国だからだ」
ロックが詳しく説明してくれる。
王国や帝国の支配下にある冒険者ギルドは、ハッキリ言うと中抜きが酷い。
依頼達成時の報酬も難易度に見合っていないものが多かった。
その点、ここは共和国であり、君主が居ない国だ。
故に、ギルド自体が主となって運営することが可能となり、中抜きゼロを実現することができた。
するとどうなるかというと、ギルド職員や商人などの取引相手、依頼主はもちろんのこと、ギルドを一番利用している冒険者たちの取り分が増えるので、それに比例する形で成り手も増えるのだ。
だからこのギルドは冒険者にとって理想形といっても過言ではない。
「冒険者になりたい人にとって、ここは夢のような場所なのね」
「そういうことだ」
冒険者が多い謎が解明されて満足したわたしは、ロックと共に受付へと向かう。
手渡された登録用紙に記入し、二人分の登録料を支払う。それから少し待つと、首から下げることのできるタグをもらった。これが冒険者証とのこと。
冒険者証には、持ち主の名前と星が描かれている。この星の数が多くなればなるほど、ロックに近づくことができるというわけだ。
とはいえ、この国ではロックもわたしと同じように一つ星の新米冒険者なのだけど。
「ふふっ、素敵ね……。わたし、元英雄と肩を並べた気分だわ」
冒険者になったことが誇らしくて、わたしは気分がよくなった。
その姿を見たロックは、微笑ましいものでも見るような目でわたしを見ていた。