王都を発ってから、今日で丁度一週間が過ぎた。
禁呪とされる飛行魔法は使わず、徒歩旅なのでそれなりに時間はかかってしまったけど、ようやく目的地が見えてきた。
「あれがフォルトナ共和国……大きいわね」
ここから見ても、その巨大さに目を奪われる。王国とは比べ物にならないほどだ。
と言いつつも、わたしは手元を動かす。
その手は石喰い虫の死骸から魔石を掴み取っていた。
「よし、魔石確保っと」
小さな魔石を右手の親指と人差し指で挟み、太陽の光に当ててみる。魔物の体内にあったとは思えないほどの美しさだ。
この旅を始めた当初、森狼の魔石を回収するのも目を背けていたけど、それもすぐに適応してしまった。
スライムを自力で倒して、その魔石を手にしたのが切っ掛けかもしれない。
ロックが倒した魔物の魔石を回収したいと自らお願いし、今日に至るまで何度も挑戦してきた。気付いたときには、わたしは魔石回収係になっていた。
確かに手は汚れるけど、ロックの洗浄魔法があると分かったのも大きい。おかげで問題なくわたしの仕事をこなすことができた。
「フォルトナ共和国入りしたら、まずはギルドに行くぞ。そこで二人分の冒険者登録を済ませて、魔石の換金をする」
「ご飯はどうするの? もうすぐお昼だけど……」
魔石を換金したあとに行くのだろうか。
それだけ待たされてしまうと、お腹がぐるぐると鳴ってしまいそうだ。
「宿を取ったあとだな」
「お腹が空きすぎて倒れないといいけど」
「これを食べとけ」
気を利かせてくれたのか、ロックは革袋の中から角兎の干し肉を取り出す。
「……んー」
そうじゃない。そうじゃないのだ。
それも美味しかったけど、そういうことではない。
不満顔のわたしを見て、ロックが息を吐く。
「手持ちがないことには、食べたり飲んだり泊まったりすることもできないだろ」
「……そうね、我慢するわ」
魔石を換金しないことには、満足に食べることもできない。
冒険者とは、なんと過酷な仕事だと、わたしはお腹に手を当てながら思った。
けれども気を取り直し、わたしは口元に笑みを浮かべる。
「ロック。フォルトナ共和国、楽しみね!」
「ああ、そうだな」
二人して胸を高鳴らせる。
わたしは角兎の干し肉で小腹を満たしつつ、再び歩を進めた。