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【33】フォルトナ共和国

「ところで、フォルトナ共和国……って、どんな国なの?」


 目的地が変更となったことを知ったわたしは、ロックに訊ねてみる。

 王都から一度も外に出たことがなかったから、他の国のことはよく知らなかった。

 学校で学ぶことも王国領土のことばかりで、外の世界を知るには自分で調べるしか方法がない状況だったのを思い出す。


「一言で表すとすれば……王の居ない国だ」

「王の居ない国……? そんな国が実在するの?」

「ああ。フォルトナ共和国は昔からずっとそうやって歴史を刻んできた」


 フォルトナ共和国には、国を治める王が居ない。

 複数の貴族の手によって成り立ち、支えられている。


 形としては一つの国を成しているけど、実態はそこに住む人たちですら全てを把握することは不可能だ。


 何故ならば、フォルトナ共和国は東西南北四つの国の中でももっとも巨大な国だからだ。


 モルドーラン王国とヴァントレア帝国。

 この二つの強国を以ってしても、刃を向けることを躊躇わせるほどの国。それがフォルトナ共和国であり、何物の影響も受けることのない中立国でもあった。


「過去に一度行ったことがあるが、商業が盛んで面白い国だぞ」

「ふうん、商業が……」


 目的地が帝国からフォルトナ共和国に変わって案外よかったのかもしれない。

 フォルトナ共和国であれば、ロックとわたしものびのびと冒険者業に精を出すことができそうだ。


「……あっ、ねえ!  ギルドは? フォルトナ共和国に冒険者ギルドはあるの?」


 肝心な部分を聞き忘れていた。


 フォルトナ共和国には、ギルドがあるのか否か。

 もし、存在しなければ、冒険者証を発行することができない。


 不安な表情でロックに訊ねると、小さく頷いた。


「当然だ」

「よかったぁ……」

「魔物はどこにでも潜んでいるからな。ギルドが無い国は魔物への抵抗を諦めたのと同じだ」


 その台詞に、わたしはなるほどと思った。

 言われてみれば確かに、ギルドがあるからこそ冒険者が集まり、魔物を倒してくれる。


 つまり、国とギルドは切っても切れない存在ということだ。


「フォルトナ共和国……楽しみね、ロック」


 期待に胸を躍らせながら、わたしはロックに笑いかけていた。

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