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【25】ロックの手料理

「……お、おいしい」


 魚の魔物と森狼の肉を恐る恐る口にした感想は「おいしい」の一言だった。

 魔物を食べたことなど一度もなかったけど、実際に口にしてみると普通の食材と味も見た目もほぼ変わらない。日常で出されていたとしても、恐らくわたしは気付かないだろう。


「食わず嫌いが治ったな」

「べ、別に嫌っていたわけじゃないから。食べる機会がなかっただけよ」


 横からの口出しに反論する。


 ロックの手際は実に素晴らしかった。

 幼い頃から冒険者として生計を立てているので、料理をするのもお手の物だった。


 その一方、わたしはというと……家事一つやったことがない。

 まあ、ね。『溺愛』のせいで過保護に育てられてきたから、そんなことをしなくても不自由しなかったのだ。


 これからはわたしも新米冒険者として生きていくことになる。

 ロックのように、料理の腕を磨くことも視野に入れる必要がありそうだ。


「そういえば、話が途中だったな」


 森狼の肉を食べながら、ロックが呟く。

 その言葉に反応し、わたしは頷いた。


「アレクさんが旅先案内人として同行することが分かったのよね」


 帝国入りしたロックは、魔人討伐依頼を達成したと言っていた。

 つまり、アレクが魔人との戦闘に参加していた場合、四つ星に上がる条件を満たしたことになる。でも、


「結果的に言うが、あれは罠だった」

「……罠? え、それって……魔人が罠にかかったってこと?」

「当たらずも遠からずだな」


 反問すると、ロックが首を横に振る。

 その表情はいつの間にか険しくなっていた。

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