「……お、おいしい」
魚の魔物と森狼の肉を恐る恐る口にした感想は「おいしい」の一言だった。
魔物を食べたことなど一度もなかったけど、実際に口にしてみると普通の食材と味も見た目もほぼ変わらない。日常で出されていたとしても、恐らくわたしは気付かないだろう。
「食わず嫌いが治ったな」
「べ、別に嫌っていたわけじゃないから。食べる機会がなかっただけよ」
横からの口出しに反論する。
ロックの手際は実に素晴らしかった。
幼い頃から冒険者として生計を立てているので、料理をするのもお手の物だった。
その一方、わたしはというと……家事一つやったことがない。
まあ、ね。『溺愛』のせいで過保護に育てられてきたから、そんなことをしなくても不自由しなかったのだ。
これからはわたしも新米冒険者として生きていくことになる。
ロックのように、料理の腕を磨くことも視野に入れる必要がありそうだ。
「そういえば、話が途中だったな」
森狼の肉を食べながら、ロックが呟く。
その言葉に反応し、わたしは頷いた。
「アレクさんが旅先案内人として同行することが分かったのよね」
帝国入りしたロックは、魔人討伐依頼を達成したと言っていた。
つまり、アレクが魔人との戦闘に参加していた場合、四つ星に上がる条件を満たしたことになる。でも、
「結果的に言うが、あれは罠だった」
「……罠? え、それって……魔人が罠にかかったってこと?」
「当たらずも遠からずだな」
反問すると、ロックが首を横に振る。
その表情はいつの間にか険しくなっていた。