森狼の魔石を回収したあと、わたしたちは森の中を比較的ゆっくりとした速度で進んで行った。
すると開けた場所に出た。
「……これ、湖?」
思わず感嘆する。
まさかこの森の奥にこんなにも大きな湖があるとは思わなかった。
「一度休息をとる。歩き通しだと効率が悪くなるからな」
「そう? それじゃあお言葉に甘えようかしらね」
助かった……。
生まれてこの方、今日ほどひたすらに歩き続けたことはなかったので、足が棒になりかけている。一休みできるとしって内心ホッとした。
「それにしても、綺麗な湖ね……」
魔物が巣食う森の中とは思えない。
水も澄んでいる。底が見えそうなぐらいに……。
「引け」
「ひゃっ」
水面に顔を近づけると、ロックに肩を掴まれて後ろに引っ張られた。
何をするのかと抗議しようと思ったら、次の瞬間、湖の中から何かが勢いよく飛び出した。
ロックは、その何かを剣で一突きする。
「なにっ? それなに!?」
「気を付けろ。水の中にも魔物は潜んでいる」
剣に刺さった魔物は、魚の形をしている。既に息絶えているのか、ピクリとも動かない。
「き、肝に銘じておくわ……」
もし、ロックが引っ張ってくれなかったら、今頃わたしの顔がなくなっていたかもしれない。そう思うとゾッとする。
「丁度いい。昼飯はこいつにするか」
「……え? 今なんて言ったの?」
「飯を食うって言ったんだ」
「そうじゃなくて、その魔物を食べるって言わなかった……?」
まさか、冗談だよね、とわたしは目を向ける。
しかしロックは意地悪そうに口角を上げて言葉を返す。
「冒険者になりたいんだろ?」
だから食べろ、と。
わたしは確信した。
この男、絶対いじめっ子タイプだよ……。