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【22】森狼

 森の中は暗かった。

 怖くはないと言った手前、不安を口に出すことはなかったけど、自然と体が縮こまる。

 わたしはロックの背中にしっかりとくっ付いて歩き、不測の事態に備えていた。


「……魔物、出てこないわね」


 暫く歩いても、一向に魔物は姿を現さない。

 そうなってくると、段々と心に余裕が生まれてくる。調子に乗ってわたしは軽口を言う。


「ひょっとして、わたしたちに恐れをなして逃げているのかしら」

「違う」


 でもそれをロックはあっさりと否定した。

 そしてワザとじゃないかと言いたくなるようなことを口にする。


「俺たちという獲物を確実に捕らえるために、下準備をしてる段階だ」

「ちょ、ちょっと、それって……」


 ガサッ、と何かが動く音が聞こえた。

 慌ててその方向へと目を向けてみる。するとそこには犬のような見た目の動物が潜んでいた。


「森狼だ。群れを成して獲物を食い散らかす魔物だな」

「く、食い散らかす……って、もしかしてわたしたちを……?」

「他に何がいる」


 眩暈がした。

 外に出て早々に、魔物に四方を囲まれてしまい、今にも襲い掛かってきそうな雰囲気だ。

 目に見える範囲だけでも十匹以上はいるし、逃げ場はどこにもない。

 急に怖くなったわたしは、ロックの背中に文字通りにしがみつく。


「ど、どうしよう……っ」

「おい。邪魔だ、動けないだろ」

「で、でも」

「死にたくないなら、俺から離れてろ」


 死にたくないから離れたくないのに、と心の中で叫ぶ。

 だけどこのままだと、ロックの邪魔になるのは明白だ。


 ロックの言うことに従い、わたしは渋々離れる。


「すぐ終わる」


 不安気なわたしを見て、安心させるようにロックが言う。

 と同時に、森狼たちが一斉に飛びかかってきた。

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