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【21】鳥籠の外

「あっ、兵士たちが出てきたわ」


 南門から兵士がわらわらと外に出てきた。

 どうやら飛行魔法で外壁を飛び越える姿を見られていたらしい。


 それがロックとわたしだということはバレていないはずだけど、残念ながらゆっくり歩いてはいられなそうにない。


「話の続きは、また後日だ」

「ええー。気になるから今日中に絶対話してよね」


 お願いすると、ロックは肩を竦めて反応した。


 王国の南方は森林地帯になっていた。

 ロックの話によると、魔物が多く潜んでいるので危険な場所のようだ。


 でも、ロックは兵士たちを巻くために、わたしを連れて森の中へと入るつもりだ。


「……ねえ、一言いい?」

「もたもたしてると追いつかれるぞ」

「それは分かっているわ」


 早歩きで進みながらも、わたしはロックに声をかける。

 すると、兵士たちとの距離を確認しながらもわたしに目を向けた。


「なんだ」

「言ったと思うけど、わたし……外に出るのってこれが初めてなの」



 不意に、ロックが足を止める。

 慌ててわたしもその場に立ち止まった。


「良いものだろ? 冒険者になれば、この景色を毎日楽しめるぞ」

「っ、……ええ、本当に素晴らしいことよね」


 モルドーラン王国から、ヴァントレア帝国へ。

 そして一つ星の新米冒険者として新たな人生を歩み始める。


 こんなにも胸がトキメクことは滅多にない。


「……まあ、その浮かれ気分がいつまで続くか疑問だがな」

「あら? ずっと続くに決まっているじゃない」

「どうだかな」


 そう言って、ロックは再び前へと早歩きを始める。

 彼に並んでわたしも足を動かす。


「これから俺たちが入るのは、魔物が巣食う森だ。お前は一度も見たことがないんだろ? 怖がって漏らすなよ」

「失礼ね。怖がったりなんてしないから」


 ふん、と鼻息荒く声を上げる。

 けれども、続けてすぐに笑ってみせた。


「そもそも、何かあっても貴方がわたしを守ってくれるでしょう? だから何にも心配していないわ」

「……はぁ。言っとけ」


 ため息を吐くロックの横顔を見ながら、わたしは軽い足取りで森の中へと入って行った。

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