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【14】家出

 荷物を持ち、城下町を駆け足で進んで行く。

 待ち合わせ場所の裏路地に着くと、既にロックの姿があった。


「貸せ」


 そう言って、ロックは手を差し出す。

 わたしの荷物を持ってくれるということだろう。だけど、


「え? ……大丈夫なの?」

「俺を馬鹿にしてるのか」


 わたしの言葉に反応し、ロックは目を細めて答える。


「俺の力を借りたいと言った奴が、俺の力を疑ってどうする」

「……うん。それもそうね」


 ロックとは、これから長い付き合いになるのだ。

 初めから疑っていては信頼関係も築けない。


「よろしくお願いするわ」

「……行くぞ」


 わたしの荷物を持ったあと、ロックは返事を待たずに歩き始める。

 その様子を見て、わたしは安堵した。


 正直、心配していた。

 でもロックは義足のままでスタスタと歩き始める。それはまるで自分の体の一部であるかのように……。


 すると、ロックが足を止めて振り返る。

 わたしの視線が気になったのだろう。


「魔力のおかげだ」

「え、魔力の……?」

「ああ。義足の箇所に魔力を流すことで、違和感を消しているんだ」

「……なるほど?」

「分からなくてもいい。とりあえず知っておけ」


 ロックは更に続ける。


 特定の箇所に魔力を直接流すことで、自分の足のように振る舞うことができる。

 当然のことながら、魔力は減り続ける。

 だけど、ロックはモルドーランの英雄と呼ばれた冒険者だ。彼の魔力量は、そんじょそこらの冒険者とは比べ物にならないらしい。


 とはいえ、一度も魔法を使ったことのないわたしにとって、魔力の話はチンプンカンプンだった。だから言われた通りに知っておくことにした。


 そんな話をしながら歩き続けること十分足らず。

 人目を避け、城下町の北門から外に出た。


「……この国ともお別れね」


 振り返り、わたしは王都に別れを告げる。

 暗くてよく見えないけど、きっと外壁も立派に違いない。


 そんな呑気なことを考えながら王都を眺めていると、逆側から声をかけられた。


「……メル? メルじゃないか?」

「ッ!?」

「ここは王都の外だが……何故きみがここに?」


 声の主は、疑問を口にする。

 同時にしっかりと目を合わせてくる。


「……え、エリック様」


 わたしに声をかけたのは、元婚約者のエリック・モルドーラン様だった。

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