後日、わたしは状態異常から身を守る魔道具の存在を知った。
学校の図書館で必死になって調べたのだ。
彼は、それを付けていたのだろう。
だから『溺愛』の影響下に置かれなかった。
「うーん……」
でも、本当にそうだろうか。
魔道具一つ身に着けるだけで、『溺愛』から逃れることが可能なのだろうか。
にわかには信じられない。
彼を除いて、誰一人として魔道具を身に着けていなかったとは、到底思えないからだ。
確かに、その手の魔道具さえあれば、『魅了』のようなスキルの効果を受け付けなくすることはできる。目を通した本の中にも、そう記されていた。
だけどそれは『溺愛』とは違う。
本によると、『魅了』は発動型のスキルで、効果は『溺愛』よりも強そうに思えた。但し、発動しなければ効果を発揮することはできないし、魔力の消費量も激しいらしい。
その一方、わたしの『溺愛』は能動型のスキルで、常に効果を発揮している。それは『魅了』よりも強くはないけど、能動型の恩恵なのか、魔力を一切消費せずに済む。
魔力自体がよく分からないし、そんなものがわたしの中にあるのかどうかも定かではない。だけど、能動型のスキルのほとんどが魔力を消費しないみたいなので、恐らく『溺愛』も同じに違いないと思ったのだ。
でも結局のところ、疑問が解決されたわけではない。
スキルによっては魔道具の影響を受けるものもあるし、受け付けないものもある。
だからわたしは、実験してみることにした。
学校からの帰り道で、学友たちと別れたあと、わたしは一人で魔道具店に入り、状態異常を防ぐ魔道具を一つ購入する。
そしてそれを叔父へとプレゼントした。
実験と言えば、叔父だ。
わたしからの贈り物に喜んだ叔父はその場で身に着けてくれた。
でも、その後もわたしへの態度は変わらない。普段通りにわたしを甘やかし、溺愛してくれた。
つまり、わたしの『溺愛』は状態異常ではないということだ。
だとすれば何故、彼はわたしと目を合わせたにもかかわらず、溺愛しなかったのだろうか。
思考を巡らせても答えは出ない。
どんなに調べても理想の結果を得ることができない。
そしてその謎が解ける前に、彼が率いる冒険者一行が隣国――ヴァントレア帝国に渡ったとの知らせを受けることになる。
そこから更に、数年の月日が流れた。