凱旋パーティーを少し早めに切り上げて、わたしは両親と共にメロール邸へと戻っていた。
お風呂に入り、自室にこもり、何を考えているのかといえば、パーティーで挨拶をした冒険者の面々についてだ。
わたしの目に、彼らの姿は格好良く映っていた。
誰の援助も受けずに自分たちの力だけで今の地位を築き上げたのだ。
ふと考える。
わたしでも彼らのような冒険者になることができるかな、と。
生まれてこの方、ただの一度も王都の外に出たことのないわたしにとって、それはエリック様との婚約を断るよりも難しい気がした。
でも、もしも冒険者になることができたら、今のような甘えっぱなしの生き方をせずに、自分の力で自立した生活を送ることができるかもしれない。
いや、きっとそうなるはずだ。
「冒険者……いいかも」
彼らのように仲間と一緒に行動していると、『溺愛』の効果を与えてしまう。
だから、冒険者になるなら仲間は要らない。わたし一人だ。
「……うん。善は急げよね」
思い立ったが吉日、わたしは急いでお父様とお母様に打ち明けた。
結果はもちろん、ダメだった。
薄々分かってはいたけど、ハッキリと言われてしまった。
いったいどこに一人娘を危険極まりない冒険者にする親がいるのだ、と涙ながらに反対された。こんなときでも『溺愛』の効果なのか、決して怒られることはなかった。
溺愛されすぎるというのも、厄介なものだ。
ただ、それでもやっぱり諦めることはできなかった。
両親が寝静まった頃合いを見計らい、わたしは一人コッソリとメロール邸を抜け出し、城下町へと足を延ばした。