――『溺愛』。
その形態は発動型でも誘発型でもなく、能動型のスキルだった。
「止めることが……できないの?」
つまり、わたしは『溺愛』スキルを自分の意思で止めることができない。
占師には、そう言われた。
それがどういう意味を成しているのか。
わたしは絶望と共に理解した。
わたしと両親は、毎日のように顔を合わせている。
それは『溺愛』の効果時間が途切れることなく続いていることを示す。
「お父様も……お母様も、みんな……本当はわたしのことなんて……」
わたしが『溺愛』を持っていたから優しくされていただけで、本当は誰もそういうつもりじゃなかったのかもしれない。
一度でも疑ってしまえば、もう戻ることはできない。
占師に『溺愛』が能動型のスキルであることを教えてもらった瞬間から、わたしは両親を含めた全ての人たちの言葉を信じることができなくなってしまった。
もし、わたしが『溺愛』を持っていなかったら、両親はわたしのことを好きでいてくれただろうか。
もし、わたしが『溺愛』を失ってしまったら、目を覚ました人たちはわたしのことを嫌いになるのだろうか。
不安が常に付きまとう。
結局、その夜はあまり深く眠ることができなかった。