「……占師?」
「ええ、そう! 占師よ! 近所によく当たるって評判の占師が来てるの!」
「そうそう! だからメル様も行きましょう!」
その日、わたしは学友から占師に視てもらおうと誘われた。
何を占ってもらうのかと思えば、やはり恋愛についてだった。将来どんな人と結ばれるのか、気になって仕方ないのだろう。
わたしにはエリック様がいるから、恋愛相談の必要はない。
でもこれはチャンスだと思った。
その占師がインチキではなければ、恐らくは何らかのスキルを持っているはず。
だとすれば、わたしの力について何か手掛かりが見つかるかもしれない。
わたしは、スキルの存在自体は調べて知っていた。
きっと、わたしの力も何らかのスキルに違いない。その正体を知りたい。
だからわたしは学友の誘いに乗ることにした。
「やあやあ、お嬢ちゃんは実に不思議な力を持っているようだ」
「やっぱり、わたしにはスキルがあるのね? それはどんな名前なの?」
占師の言葉に、わたしは胸を躍らせた。
スキルを持つ人間は滅多にいない。モルドーラン王国では、わたしの知る限り一人しかいない。それは第一王子のマルス様が持つ『王制』スキルだ。
王国民であれば、マルス様のスキルについて知らない者はいないだろう。
わたしは『魅了』のようなスキルを持っているのではないかと予想した。
それだとすれば、誰も彼もがわたしを好きになったとしても納得がいく。でも、
「お嬢ちゃんのスキル……それは『溺愛』だな」
「……で、できあい?」
その日、わたしは初めて自分の持つスキルの名称を知るところとなった。