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【23話】いつの間にか眠りに落ちてしまったみたいです

「おかえり、ノア」

「……た、ただいまです」


 ギルド浴場から部屋へと戻ってみると、ロイルの姿があった。既に上がっていたようだ。

 部屋の灯りは無く、窓から見える薄闇だけが頼りだ。


「今日はさ、ノアに出会うことが出来て本当に嬉しかったよ」

「わ、わたしもです……。わたしも、ロイルが声を掛けてくれたおかげで、もう一度……」


 ――もう一度、夢を追い掛けようと思うことが出来た。

 だからノアは、ロイルに心から感謝している。


 ロイルと出会うことがなければ、冒険者を止めていたに違いない。

 もし仮にボドとエリーザの荷物持ちを続けることが出来ていたとしても、それも結局は明るい未来など訪れることはなかっただろう。

 魔力ゼロから変わることなど、一生無かったはずだから。


 その心を安らげるように、ベッドの中で今日の出来事を一つずつ話していく。たまに笑いが漏れたりしつつ、それでも静かな空間に二人は溶け合っていった。

 そして、あれほど緊張していたのが嘘のように、ノアはいつの間にか深い眠りに落ちていく。


「……おやすみ、ノア」


 可愛らしい寝顔を見せるノアを見守り、ロイルはそっと囁く。

 ノアとロイル。二人の長いようで短かった一日が、ようやく終わりを迎えた。


 翌朝――、


「うぅ、むにゃ……ふわぁ」

「あ、起きた? おはよう、ノア」

「んんぅ……? ……………………ぁ」


 寝ぼけ眼に声を掛けられ、ノアは固まる。

 ここはどこだ? この人は誰だ?

 昨日、一体何があった?


 寝起きで上手く回らない頭に鞭を打ち、一つ一つ思い出していくことで、ノアはついに思い出す。ロイルと同じ部屋に寝泊まりしていたことに。

 と同時に、寝顔と寝起きの顔をこれでもかと見られてしまったことにも……。


「……お、おはよう……ごじゃいます……」


 口が滑りつつも、朝の挨拶をする。

 これから毎朝、これを経験することになるのか……。

 毛布で顔を覆い、朱色に染まった表情を見られまいと、ノアは必死に隠すのであった。

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