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21話】どうやらわたしはロイルのことを意識しているようです

 金貨をたくさん持っているロイルに、節約と言う言葉は無用かもしれない。

 それにそもそも、今日一日だけで銀貨十二枚を稼ぐことが出来たのだ。わざわざ節約の為に同じ部屋に寝泊まりする必要はないだろう。


 前のパーティーでは、ボドとエリーザの二人が付き合っていたので、二人が同じ部屋に寝泊まりし、ノアが一人部屋だった。あの二人は節約のためだと言っていたので、それを思い出してつい言葉にしてしまったのだが……。


「節約か、いいね。それじゃあ二人一緒の部屋ってことで」

「――ッ、あ、はいっ、分かりましたっ」


 顔が真っ赤になっていく。慌てて視線を外し、ノアは照れ隠しに頬をかく。

 別に付き合っているわけではないが、ロイルと同じ部屋で寝泊まりすることがあっさりと決まってしまった。

 異性と二人きりで寝泊まりするのは初めてなので、今から緊張が止まらなくなる。


「ぎ、ギルドには冒険者専用の宿部屋がありますから、今日はここに泊まるとして、明日以降、ちゃんとした宿を探しましょう……」

「うん。何から何までありがとね、ノア」

「い、いえ……」


 いそいそと、ノアは受付へと移動する。そして宿の手配をした。


     ※


「――よし、今日の宿も決まったことだし、ご飯食べに行こうか」

「はい、そうしましょう……」


 ロイルの言葉が頭に入って来ない。

 ご飯を食べた後のことが気になりすぎて、脈が速くなっている。


「……ノア? 大丈夫? 顔が赤いみたいだけど」

「ひゃっ、大丈夫です! わたしは元気ですよ! はい!」

「そう? それなら別にいいけど。何かあるなら、気にせず言っていいよ」

「は、はいっ」


 ロイルの優しさに、どんどん顔が赤くなっていく。これを止めることは出来るのだろうか。

 いや、恐らく今日は無理だろう。明日の朝、目を覚ますまでは……。

 否、覚ました後も、同じ部屋にいるロイルの寝顔を見たりでもすれば、また赤くなるかもしれない。


「……ど、どうしたらいいの……」


 ぼそりと呟く。

 今日一日ロイルと一緒に行動をして理解した。

 どうやらわたしは、ロイルのことを意識しているようだ、……と。


「さあ、行こうか」

「ッ」


 何も考えていないのか、もしくはその逆か、ロイルが当然のようにノアの手を握る。

 ひとまずは、何事もなく一晩過ごすことが出来ますようにと願いつつ、ノアはロイルに手を握られたまま、ご飯を食べにギルドの外へと出るのであった。

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