武具を取り扱っている店に入り、ロイルは自分に合いそうなものを適当に見繕った。
重厚感のあるようなものではなく、武器も防具も軽めのものばかりで、動きやすさを重視している。
冒険者になったばかりの新人なので、下手に重たい装備をして身動きが取れなくなるよりは、身軽な方が圧倒的に戦いやすいと考えてのことだ。
その後はポーションを販売しているお店で魔力ポーションを購入し、王都の門をくぐって外へと出た。
「いよいよ……ですね」
ノアは気を引き締め、程よい緊張を身にまとっていた。
元パーティーのボドとエリーザからクビを宣告されて僅か数時間、新しいパーティーを組み、早速魔物狩りに行くことになるとは、昨日の自分はこれっぽっちも予想していなかったことだろう。
更には、魔力ゼロから一気に十マナも増えるだなんて。
だが、これは現実だ。
パーティーをクビになったおかげで、ノアはロイルとパーティーを組むことが出来た。この出会いに感謝すると共に、ロイルと二人で冒険者として活躍出来るように頑張ろう、と考えている。
「ギルドの情報ですと、この森の奥に、ゴブリンの巣が幾つかあるみたいです」
王都南部の森林地帯。
ここは、王都を拠点にする冒険者達が腕を鍛えるに打ってつけの狩場だ。
生息する魔物は比較的弱いものばかりで、ゴブリンやスライム、コボルトが主となっている。
ゴブリンやコボルトには上位種が存在するが、森の奥の奥へと進まなければ、遭遇することもないだろう。
故に、冒険者になったばかりのロイルにとっては、絶好の狩場であるといえる。
「へえ……他の冒険者の姿も、ちらほら見えるね。もしゴブリン討伐のクエストを受けた冒険者がいたら、魔物の取り合いになったりするのかな?」
「はい、あると思います。その場合は先に倒した方が優先されますけど、焦って危険な状況を作るよりは、譲った方がいいかもしれません」
ノアのアドバイスを受け、なるほどと頷いた。
ロイルは魔物を相手に戦闘を行った経験が無い。故に、実際に魔物と遭遇した際に生じる不測の事態に対応出来ないかもしれない。
この点に関して言えば、ノアは冒険者歴半年の先輩なので、その意見を心に留める。
「じゃあ早速、ゴブリン探しに奥へ行こうか」
「はいっ」
二人は互いの装備を再度確認し合った後、森の中へと入っていった。
それから暫くし、太陽の光が差し込み難い、鬱蒼と生い茂った場所に辿り着くと、ロイルが足を止める。
「ちょっとストップ」
「? 何かありましたか?」
「ゴブリンの巣を見つけた」
そう言って、ロイルはノアに顔を向ける。
その瞳は真っ白になっており、【魔眼】を使用していることを理解することが出来た。【隠蔽】を使わずあえて見せることで、【魔眼】の効果で魔力の流れを見ていたことをノアに伝えたのだ。