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【11話】きみのことが欲しいと言われてしまいました

 わたしとですか?

 と言いたげな表情で、ノアがロイルの顔を見る。


「さっきの……見てましたよね?」

「うん、全部見てた」

「だ、だったらその……わたしがただの荷物持ちで役に立たないことも……」

「荷物持ち? まさか、僕はきみを戦力として勧誘してるんだけどな」

「わたしが、戦力……? で、でもっ、半年経っても魔力はゼロのままですし、全然成長出来ないわたしよりも、もっと他に強い方は沢山います!」


 既にノアの心は折れかけている。荷物持ちすらも拒否されたのだから当然だ。しかし、


「きみより強い人なんていないね。断言するよ」

「そ、そんな噓を吐かれても――」

「僕はね、きみのことが欲しいんだ」

「――ッ!?」


 きみのことが欲しい。そんな台詞を面と向かって言われたのは、これが初めてだ。

 ロイルはノアの手を握る。そしてもう一度、


「だからさ、僕とパーティーを組んでよ」


 と言った。


「……ほっ、本当にわたし、お役に立てないかもしれませんよ? 魔力ゼロだからスキルは使えませんし、それでも、後悔しません……か?」

「後悔するのは、きみをクビにした彼等の方だ」


 そう言って、ロイルは視線を動かす。その先にあるのは、何度も転んでは怒りをぶちまけ続けるボドの姿だ。クビ宣告を受けて涙を流していたノアは、ボドに何が起きているのか知る由もない。


「わたしを……ほしい、……かぁ」


 ノアは一人だ。ボドとエリーザは元パーティーメンバーであり、仲間ではない。

 そして目の前には、自分のことを戦力として欲しがる青年が一人。


 急すぎて理解が追いつかない点もあるが、構うことはない。魔力ゼロの自分をほしいと言ってくれたのだ。

 だからノアは、心を決めることにした。


「わ、わたしでよかったら、その……お、お願いしますっ!」

「ありがとう。これで今日から僕たちは仲間だね」


 仲間と言われて、ノアは胸が高鳴る。

 だがここで、一つ気づく。そういえばまだ知らないことがあった、と声を出す。


「あの、お名前って……」

「ロイル。それが僕の名前だよ」

「ロイルさん……ですね」

「同じパーティーの仲間なんだから、ロイルって呼び捨てでいいよ」

「あっ、はい! でしたらわたしのことも……」

「ノア」


 ふいに、呼び捨てにされる。

 緊張から瞬きを何度か繰り返し、けれどもノアは頷いた。


「ろ、ロイル……」

「いいね。もう一回言って?」

「ッ、無理です! やっぱり呼び捨ては無理ッ!」

「ええっ? 一度言えたんだから大丈夫だってば。ね、ノア?」

「――ッ、うううぅ!」


 いつからか、ノアの目から涙が消えていた。そして代わりに、白い頬が朱色に染まり始めていることに、ノアはまだ気付いていなかった。

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