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【4話】強制的に荷物持ちをさせられることになりました

「いえ、冗談ではなくてですね、生まれた時からずっと魔力量が増えなくて……だから」

「ってことはお前、スキル持ってんのに発動出来ねえのか?」

「っ、……はい」


 大きな溜息を吐くボドは、横に座るエリーザを見た。


「……おい」

「なによ」

「こいつさ、どうするよ?」

「知らないわよ。仲間にしたのは貴方でしょう、ボド」

「チッ」


 舌打ちし、ボドは足をゆする。


「じゃあ、この話は無しだ。俺達はお前を仲間にしなかった。それでいいな?」

「えっ、そんな……! ちょっと待ってください、確かにわたしは魔力がありませんけど、戦うことぐらいは……」

「スキルも使えねえやつが戦う? 何馬鹿なこと言ってんだ。身体強化や付与スキルも使えねえってことは、生身の人間と同じってことだぞ? んな状態で俺達についてくるつもりかよ? 大人しく諦めんだな」


 ボドの言い分は正しい。

 魔力ゼロのノアを連れ立って魔物と対峙した時、邪魔にしかならないだろう。だが、


「――いや、ちょっと待てよ? 魔力がゼロでも、荷物持ちぐらいにはなるんじゃねえか?」

「荷物持ちねえ……それなら有りなんじゃない」


 ボドの思い付きに、エリーザが同意する。


「荷物持ち……ですか? でもあの、わたしは冒険者になったから、魔物を倒したり……」

「うっせんだよ、出来損ないが」

「っ」


 出来損ない、と言われる。その言葉がノアの心を蝕む。


「魔力ゼロのゴミが冒険者業をやりてえなら、荷物持ちぐらいしかねえだろ。ってか、ゴミに役目を与えてやろうって言ってんだから感謝しろよな」

「そうよ? 貴女一人で魔物狩りにでも行ったら、すぐに死んでしまうと思うし、良い案だと思うのよね」

「ってことだからよ、これからお前は荷物持ちだ。いいな?」


 そう言って、ボドは自分の持ち物をノアの前へと置く。

 続いてエリーザも。


「私のもの、落として壊したら弁償してもらうから。運ぶ時は十分気を付けるのね」


 二人の中では既にノアが荷物持ちとして決定したのだろう。

 有無を言わさぬ口調と態度に、ノアは落胆する。


 しかし、冒険者としての経験が無いのは事実だ。

 一人で魔物狩りをしたとして、失敗しないという保証はない。たとえ荷物持ちとしてでも、仲間が一緒にいた方が生き残る確率は高くなるし、その場で見て経験を積むことも不可能ではない。

 現に、ノアは私設兵と共に魔物狩りをしたことで、スキルを二つ覚えている。


「……分かりました。これからよろしくお願いします」


 首を垂れ、ボドとエリーザのパーティーに加わることを決意する。


 顔を上げると、二人は既に談話室の外に出ようとしていた。

 慌てて二人分の荷物を持ち、よろけながらもその背についていく。


「あ、あの! わたしの名前は――」

「ああ? 荷物持ちに名前なんて必要ねえんだよ。分かったらさっさとついて来い」

「っ、……はい!」


 名前も聞かれず、荷物持ちと呼ばれ、それでもノアは二人に従う。

 それが地獄の始まりであった。

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